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Sengoku Gensokyo: Translation Part 7

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*E043





  永遠亭。
それは深い深い竹林のさらに奥深くに、人目を避けるかのようにひっそりとあった。
まるで時が凍りついたかの如く静けさを守ってきたその館は、ある時を境にその存在を認識されるようになる。
 
  怪しい人間と兎が同居するその館は、隠れる意味を失ったのか積極的に里の人間と交流を持つようになり、時には来訪者を迎え入れる事もあった。
ただ、そこまで辿り着いた者は少ない。
 
  そんな永遠亭も、かつて開催した博覧会『月都万象展』以後特に大きな出来事も無く、住人は退屈していた。
月から身を隠す必要の無くなった事も、そう感じさせる一因かもしれない。
 
  ともかく、永遠亭の主である蓬莱山輝夜は、刺激的な出来事に飢えていた。  
Kaguya Houraisan 「ねえ永琳」  
Eirin Yagokoro 「なんですか、姫」  
Kaguya Houraisan 「なんか面白い事無い?」  
Eirin Yagokoro 「ありません」  
Kaguya Houraisan

「はぁ……
全く、何も縛るものが無いというのも考え  物ねえ。
月から隠れていた頃は、退屈とかそんな事

 考えた事も無かったのに」
 
Eirin Yagokoro

「あの頃だって、散歩くらいはしていたじゃありませ

 んか」
 
Kaguya Houraisan

「もうその程度じゃ満足できない体になったのよ。
贅  沢は敵ね、倹約しなきゃ。
当家の財務状況はどうな

 っているのかしら?」
 
Eirin Yagokoro 「御心配無用ですわ、事業はすこぶる好調です」  
Kaguya Houraisan

「聞く所によると、まあ薬が安価なのはいいとして、  ツケも許してるそうじゃないの。
もっとビシビシ取

 り立てないと駄目よ」
 
Eirin Yagokoro

「無い物を頂く事はできないじゃありませんか。
それ  に、そういうお客も大事にすれば、口伝えで評判が

 広まりお客が増える。
将来の為の先行投資です」
 
Kaguya Houraisan 「文無しばっかり集まらなきゃいいけどねえ」  
  外出する事も少なく、話し相手も永琳くらいなもので兎達は皆同じような顔だから区別が付かないし、唯一の楽しみと言えばあれしか無い。  
Kaguya Houraisan

「それじゃあちょっと行ってくるわ、留守番よろしく

 ね」
 
Eirin Yagokoro 「またですか」  
Kaguya Houraisan

「何よ、ちょっと散歩に行くだけよ。
……と言っても

 ねえ、これもマンネリ感は否めないわね」
 
Eirin Yagokoro

「近頃は人里との関係も強くなっていますし、また竹  林を燃やしたりしないでくださいよ。
悪い意味で目

 立ってしまいます」
 
Kaguya Houraisan 「あれはあいつのせいでしょ、私は関係無いわ」  
Eirin Yagokoro

「世間はそうは見てくれませんよ。
この竹林に私達が  住んでいる事は、既に周知の事実です。
また火事を

 起こしたら、真っ先に疑われてしまいますわ」
 
Kaguya Houraisan

「むぅ……
もう、窮屈ね。
こう、何か大きなイベント

 誰か起こしてよ。
ドカーンって」
 
Eirin Yagokoro 「またそんな我侭を仰る……」  
??? 「はいはい呼びました~?」  
Eirin Yagokoro 「っ!? 何者!」  
  突然、聴こえる筈の無い何者かの声が聴こえ、永琳がその方向に身構える。
……しかし誰も居ない。
 
Kaguya Houraisan 「……かくれんぼはもう飽きたって言ったでしょ?」  
??? 「あらあら、バレてたのね」  
  空間にすっと一本の縦線が入り、そこから八雲紫が姿を現した。
輝夜に永琳も慣れたもので、不法侵入者にうろたえる事も無く、丁重に応対する。
 
Eirin Yagokoro

「他意が無いのなら、玄関から堂々と来たらどうな

 の」
 
Yukari Yakumo

「以前堂々と玄関から入ったら、熱烈な歓迎を頂きま

 したので」
 
Eirin Yagokoro 「あれは他意しか無かったじゃないの」  
Kaguya Houraisan

「それで、一体何しに来たの?
 もう月も館も、ヘソ

 クリだって隠してるものは無いわよ」
 
Yukari Yakumo

「月からいらしたお姫様に、心を御慰めする一服の清

 涼剤を用意しましたの」
 
Eirin Yagokoro 「お薬なら間に合ってますわ」  
Yukari Yakumo 「でも、こういうお薬はお持ちじゃないでしょう?」  
  そう言うと紫は、一通の封書を輝夜に手渡した。
始めは胡散臭そうにしていた輝夜だったが、中を見て徐々に顔色が変わっていく。
 
Kaguya Houraisan 「これはこれは……
確かに妙薬ね」
 
Eirin Yagokoro

「……何が目的なの?
 貴方が何の裏も無くこんな話

 を持ちかけるとは思えない」
 
Yukari Yakumo

「だから他意なんて無いって言ってるでしょ。
疑り深

 いわねえ」
 
Eirin Yagokoro

「本当に?
 貴方の言葉を疑ってかからない迂闊者は

 ここには居ないわよ」
 
Yukari Yakumo

「……ちょっとだけ、あるかもしれないわね。
でもそ  れはあんまり関係無い事だから、気にしないで。

 なくとも不利益を与える事は無いと約束するわ」
 
Kaguya Houraisan

「まあ何か企んでたとしても、火の粉が掛からない限  りはどうでもいいけどね。
それに貴方達には、あの

 肝試しの件もあるし……」
 
Kaguya Houraisan 「この話、乗ってあげるわ」  
Eirin Yagokoro 「姫……
よろしいのですか?」
 
Kaguya Houraisan

「だって退屈だし、たまにはあいつ以外と遊びたい 

 わ」
 
Yukari Yakumo

「商談成立ね、まいどあり~。
それじゃあ私は忙しい

 から失礼しますわ。
御機嫌よう~」
 
  輝夜の承諾を得られるや否や、紫はそそくさと、今度はちゃんと永遠亭の表口から普通に帰っていった。  
Eirin Yagokoro

「……怪しい、怪しすぎます。
姫、私の意見としては

 あれの口車に乗るのは賛成できません」
 
Kaguya Houraisan 「怪しいわねえ、月都万象展と同じくらい怪しいわ」  
Eirin Yagokoro 「それでは至極健全ではありませんか」  
Kaguya Houraisan

「イベントなんてその程度のものって話よ。
という事  で、実務その他一切合切は永琳に任せるから、頑張

 ってね」
 
Eirin Yagokoro

「姫が受けられたお話ですのに私任せなんですか?

 あれ程退屈だ退屈だと漏らしていたのに」
 
Kaguya Houraisan 「貴方は作る人、私は食べる人」  
Eirin Yagokoro

「……適当に、やっておきますわ。
ウドンゲとてゐに

 も伝えておきます」
 
Kaguya Houraisan 「応援してるわよ!」  
Eirin Yagokoro 「はぁ……
応援だけですか」
 
  ……こうして永遠亭は、再び幻想郷の表舞台に姿を現す事となった。
一番やる気のある輝夜が肝心の部分を人任せにしているので、微妙に噛み合わなさそうではあるが……。
 
  『竹林の永遠亭』が結成されました。
を支配下に置きました。

*E044


Eirin Yagokoro 「……という訳だから、しっかりね」  
Reisen Udongein Inaba 「はあ……
そうですか」
 
Tewi Inaba 「えー」  
  永琳は、紫の面倒事と輝夜の退屈凌ぎに巻き込まれた事を告げる為、鈴仙とてゐの所へとやってきた。
案の定、永琳の言葉に何とも言えない顔をする二人。
 
Eirin Yagokoro 「何よ二人とも、その反応は」  
Reisen Udongein Inaba

「だってお師匠様、要は『また』姫のお戯れ……
と言

 うか暇潰し、なんですよね」
 
Tewi Inaba 「そうそう、実際何かするのは私達なんですよねー」  
Eirin Yagokoro

「『また』とか言わないの。
あとそんなに嫌な顔しな

 いの」
 
Reisen Udongein Inaba

「じゃあお師匠様は進んでやりたいんですか、こんな

 の」
 
Eirin Yagokoro 「てゐ、兎達はいつでも動かせるかしら」  
Reisen Udongein Inaba 「今露骨に話を逸らしましたね」  
Eirin Yagokoro

「ツッコミが厳しいわねえ、私は姫が望む事をするだ  けよ。
……まあ確かに、あの妖怪の言う事は怪しさ

 が満月だから、気をつけてはいるけど」
 
Reisen Udongein Inaba 「……まあとにかく、適当にやっておきますね」  
Eirin Yagokoro

「適当じゃ困るわ。
不肖の弟子がそんな事じゃ、私が

 適当にできないじゃない」
 
Reisen Udongein Inaba 「……程々に、やっておきます」  
Tewi Inaba

「えぇ、えぇお師匠様、どうぞこのてゐめに全てをお  任せ頂ければ、茶色の舟に乗ったかのような気持ち

 でいられる事でしょう」
 
Reisen Udongein Inaba 「そのうち背中に火を付けられそうだわ」  
Eirin Yagokoro

「全く、調子のいい口だこと。
……とにかく、そうい

 う事だからここは任せたわよ」
 
  そう言い残すと永琳は、永遠亭まで帰っていった。
後に残った鈴仙は、空高く伸びる竹の隙間から覗く空を見上げて、一つ溜息を吐く。
 
Reisen Udongein Inaba 「ふぅ……
参ったなあ」
 
Tewi Inaba 「あれ、溜息なんか吐いてどうしたの。
困るなあ」
 
Reisen Udongein Inaba 「何が困るのよ」  
Tewi Inaba 「私の授けた幸せが、溜息と一緒に消えてっちゃう」  
Reisen Udongein Inaba 「いつ私に幸せをくれたのよ?」  
Tewi Inaba

「気付いてしまったら幸せじゃ無くなるじゃない。

 けば飛ぶようなささやかな幸せなのに」
 
Reisen Udongein Inaba

「……もういいわ、とにかく適当に兎達を集めておい  てよ。
あの子らときたら、てゐの命令しかまともに

 聞きゃしないんだから」
 
Tewi Inaba

「そりゃあねえ、私は兎の長老だしー。
と言いますか  多分普通の兎達じゃ、何にもできないと思います

 よ?」
 
  確かにてゐの言う通り、人間や妖怪達と戦闘になるのなら、ただの兎など愛玩動物にしかならない。
精々、噛み付いた所を捕まって、鍋の具にされるのが関の山だ。
 
Tewi Inaba

「まあ適当に、人間とか妖怪とかを騙し……
じゃなく

 て手伝ってもらえばいいと思いますよー」
 
Reisen Udongein Inaba 「うーん……
それは」
 
Tewi Inaba

「そうでもしないと、私達だけで全部賄う事になって

 しまいますけど」
 
Reisen Udongein Inaba 「それも……
ああもう、任せるわ」
 
Tewi Inaba 「はいはい、任せといて下さい」  
  そう言うとてゐは、小躍りのようなスキップをしながら竹薮の先へと消えていった。
その背中が見えなくなったのを確認して、もう一度空を見上げた。
空の青と陽射しが飛び込んできて、思わず目を細める。
 
  ……だが空を見上げたのも、そして目を細めたのも、それだけが理由では無かった。  
Reisen Udongein Inaba (やだな……
思い出しちゃうな)
 
  鈴仙は、何かから目を逸らすように顔を伏せた。  

*E045


Kaguya Houraisan 「えいりーん、その後の具合はどう?」  
Eirin Yagokoro 「お蔭様で、いたって健康でございますわ」  
Kaguya Houraisan

「誰も体の心配なんかして無いわよ、そもそも死なな

 いし。
そうじゃなくて」
 
Eirin Yagokoro

「ウドンゲとてゐに申し付けておきました。
二人とも

 あまりいい顔はしていませんでしたが」
 
Kaguya Houraisan

「兎はねえ、みんな同じように見えて困るのよね。

 が誰か分からないわ」
 
Eirin Yagokoro

「それは耳しか見ていないからです。
大体、人型の兎

 なんて二人しかいないじゃありませんか」
 
Kaguya Houraisan

「面倒だからイナバでいいわよ。
で、いい顔をしてい  ないってやっぱりあれかしら、またあいつがおかし

 な事を考えて……
みたいな」
 
Eirin Yagokoro 「自覚されてたんですか」  
Kaguya Houraisan

「あ、もしかして『もうついていけない、
下克上だ』

 とか企んでいたり」
 
Eirin Yagokoro 「それは無いです、確実に」  
Kaguya Houraisan

「……ノリが悪いわねえ、何か嫌な事でもあったのか  しら。
あー言わなくていいから。
私が当ててあげ

 る」
 
  ニコニコしながら、考えるそぶりを見せる輝夜。
彼女の事をよく知らない者がこの場に居れば「やれやれ」等と思うのだろうが、永琳はそうではなかった。
 
Kaguya Houraisan

「貴方が気にかけているのは……
あの子の事でしょ?

 ……イナバの」
 
Eirin Yagokoro 「姫、どちらもイナバです」  
Kaguya Houraisan

「ああもう面倒臭いわね、分かるでしょう阿吽の呼吸

 で。
……レイセンの方よ」
 
  一見微笑んでいるように見えるが、瞳の奥の光に気付く事ができるのは、おそらく永琳だけだろう。  
Eirin Yagokoro

「……確かに仰る通り、気になる素振りではありまし

 たね」
 
Kaguya Houraisan 「うーん、まだ気にしてるのかしらねえ」  
Eirin Yagokoro 「おそらく」  
Kaguya Houraisan

「……貴方、分かってて言ってるのかしら?
 まあい  いわ、あの子の問題はあの子自身で解決しなきゃ意

 味無いしね」
 
Eirin Yagokoro

「……あまりに真っ当な御意見に、驚いてしまいまし

 た」
 
Kaguya Houraisan

「貴方一体私を、普段どういう目で見てるのよ。
それ

 じゃあ私はお昼寝の時間だから、お休み~」
 
  輝夜は奥の部屋へと引っ込んでいった。
彼女が襖を閉めるのを見送った後、永琳も自室へと引き返す。
その途中で、輝夜の言葉と鈴仙の様子をリフレインしていた。
 
Eirin Yagokoro

「……ふぅ、参ったわねぇ。
姫の言うように、私達が  どうこうできる問題でもないし……
薬でも調合して

 飲ませようかしら」
 
  確かに永琳の能力を持ってすれば、一時的な解決は図れるかもしれない。
だがそれでは意味が無い事も二人は……
いや二人だからこそ、よく承知していたのだった。
 

*E046


  その日輝夜は珍しく、机の前に正座して筆を手に取っていた。
スッ、と何の迷いも感じさせない筆運びで、純白の半紙に黒の流線が描かれていく。
 
Eirin Yagokoro 「あら、書道とは珍しいですね」  
Kaguya Houraisan

「美しい文字の習得は、やんごとなき身分にある者と

 して、当然の嗜みよ」
 
Eirin Yagokoro

「……姫もすっかり、地上の風習に馴染んでますね  え。
月ではそのような習慣はありませんでしたの

 に」
 
Kaguya Houraisan

「そりゃねえ、特に私は地上で暮らした時間の方が、  圧倒的に長い訳だし。
朱に交われば何とやら……

 うあっちの事なんか忘れたわ」
 
  あっけらかんとした輝夜の言葉に、他意や未練といったものは感じられない。
一度は戻る機会があった月の都だったが、己の意思で地上を選んだ輝夜と永琳に、今更思う所などある筈も無かった。
 
Eirin Yagokoro 「忘れた頃にやってくるのが困り物なんですけどね」  
Kaguya Houraisan

「いいじゃない、ここには入ってこれないって分かっ

 たんだから。
それより貴方もどう?」
 
Eirin Yagokoro 「では失礼して」  
  輝夜から筆を受け取り、席を替わってもらい机の前に座る。
永琳もまた輝夜のように、全く手がぶれる事無く紙の上を滑っていく。
 
Kaguya Houraisan 「あら上手じゃない」  
Eirin Yagokoro

「日頃から筆を執ってますから、嫌でも上達します 

 わ。
尤も、もっと細い筆ですが」
 
Kaguya Houraisan

「なるほどね、そりゃそうだったわ。
字の乱れは心の

 乱れ……
何て健康的なんでしょう。
素晴らしいわ」
 
Eirin Yagokoro 「一人で納得されても困ります」  
Kaguya Houraisan 「それにしても遅いわねえ、不健康な子達は」  
Eirin Yagokoro 「何か御用でもおありだったのですか?」  
Kaguya Houraisan

「んー、ちょっとね。
……と、噂をすれば兎が餅つい

 て桶屋がカァね」
 
  輝夜が言い終わるか否か、ちょうどタイミングよく鈴仙とてゐの二人が室内に入ってきた。
永琳の姿を認めると、二人は小さく頭を下げる。
 
Reisen Udongein Inaba 「失礼します、姫。
御呼びでしょうか?」
 
Kaguya Houraisan

「ちょうどいい所に来たわ、イナバとイナバ。
ちょっ

 とこれを見て」
 
Reisen Udongein Inaba 「姫、私とてゐのどちらの事か分かりません」  
Kaguya Houraisan 「どっちでもいいわよ、ほら、これを見て」  
  手元の半紙を両手で開き、鈴仙とてゐに見せる。
そこには達筆で『蓬莱山輝夜』と書かれていた。
 
Tewi Inaba 「わー、さすが御上手ですねぇ」  
Reisen Udongein Inaba

「はい、すごく御上手です……
けど、これがどうかし

 たのでしょうか?」
 
Kaguya Houraisan

「感動した?
 美しい文字は最早芸術と言ってもいい

 わ。
真の芸術は見る者の心を揺さぶるでしょう」
 
Reisen Udongein Inaba 「……はぁ」  
  こんな事の為にわざわざ呼び出されたのかと思うと、鈴仙は軽い眩暈に襲われた。
てゐに体を支えられて体重をかけた途端、
手を外されて思わず転びかける。
 
Tewi Inaba 「もう、しっかりしてくださいよー」  
Reisen Udongein Inaba 「この……!」  
Kaguya Houraisan

「ほらほら、勿論用事はそれだけじゃないわ。
二人と

 もこっちに来て」
 
Reisen Udongein Inaba 「何でしょうか?」  
Kaguya Houraisan 「イナバはこれで……
イナバはこっち。
これでよし」
 
  目前に立った二人の胸元に、何か文字の書かれた小さな半紙をくっつけていく。
半紙にはそれぞれ、鈴仙とてゐの名前が輝夜の達筆で書かれていた。
 
Reisen Udongein Inaba 「……あの、これは何でしょうか?」  
Kaguya Houraisan

「見ての通り、名札よ。
これでちゃんと名前で呼べる

 わね、レイセン」
 
Reisen Udongein Inaba 「……………………」  
Kaguya Houraisan

「あら、どうしたの?
 私の心優しさに感動して言葉

 も出ない?」
 
Reisen Udongein Inaba

「……未だに名前も覚えて頂いていない事に、別の意  味で感動して泣きそうです。
もうここに来て随分に

 なるのに……」
 
Kaguya Houraisan 「……そうね、随分になるのにね」  
Reisen Udongein Inaba 「……姫……?」  
  一瞬、輝夜の表情が変わったような気がしたが、次の瞬間にはいつも通りに戻っていたので、よく分からなかった。  
Kaguya Houraisan

「折角名前を書いてあげたんだから、二人とも大事に  してよ?
 それじゃあもう戻っていいわよ、御苦労

 様」
 
Reisen Udongein Inaba 「はぁ……
何だかよく分かりませんが、失礼します」
 
Tewi Inaba 「ありがとうございます、生涯の宝物にしますー!」  
  釈然としない風の鈴仙と、嬉しそうにしているてゐが輝夜に促されて部屋を退出する。
再び二人になり静けさを取り戻した部屋、その沈黙を先に破ったのは永琳だった。
 
Eirin Yagokoro 「……姫も、色々考えますね」  
Kaguya Houraisan

「人を頭が悪いみたいに言わないでよ。
まあ、今はま  だ御節介はやめときましょ、それじゃそろそろお休

 み~」
 
  言うだけ言って輝夜は、お昼寝の為に部屋を出て行った。
先日から、どうも元気の無い鈴仙……
心配は心の隅に引っかかったままだった。
 

*E047




  永遠亭の傍、竹林の中から屋敷を見つめる人影があった。
迷いの竹林での戦い以後、姿をくらましていた鈴仙である。
何を思い、再び戻ってきたのか……
その理由を、表情から読み取る事は出来ない。
 
Reisen Udongein Inaba

「また逃げてしまったけど……
また、戻ってきちゃっ  た。
……そうよね、逃げる所なんて無いって分かっ

 てたのに、何してるんだろう」
 
  月に居た頃、仲間を見捨てて地上人との戦いから逃げ出した鈴仙。
そして今また、仲間を捨てて逃げ出してしまった。
過去の行いが未だに心を縛り続けている。
 
  これまでは忘れる事で目を逸らしてきたのだが、映姫の言葉、そしてあの戦を模したゲーム……
それらが再び過去の記憶を呼び覚ましたのだった。
 
  『仲間を見殺しにして、自分はのうのうと過ごしている』……
その事が鈴仙の心に暗い影を落としている。
そして彼女は、その闇に対し逃げ出す事以外の術を持たなかった。
 
Reisen Udongein Inaba

「私の居られる場所はここしかない。
でも……
あの時  こんな私を匿って下さったというのに、私は……

 あ、やっぱり怒ってるかなあ、姫」
 
??? 「当たり前でしょ、大怒りよ」  
Reisen Udongein Inaba 「っ!?」  
  独り言のつもりでボソボソと喋っていた所に、突然背後から声を掛けられ狼狽する。
身構えながら慌てて振り向くと、そこには今一番顔を会わせ辛い人の姿があった。
 
Reisen Udongein Inaba 「ひ、姫っ……!」  
Kaguya Houraisan 「そんなお化けでも見たかのような顔して、失礼ね」  
Reisen Udongein Inaba

「そ、それは失礼しました。
しかしどうしてここに姫

 が……?」
 
Kaguya Houraisan

「この辺りは庭みたいなものよ、別に私が居てもおか  しくないでしょ。
そんな事より……
今まで一体どこ

 にいってたのかしら?」
 
Reisen Udongein Inaba 「そ、それは……
その……」
 
Kaguya Houraisan

「まあ聞かなくても分かるけど。
貴方……
一体どうし

 たいのかしら?」
 
Reisen Udongein Inaba 「どうしたいのか……
私が……?」
 
Kaguya Houraisan

「戦うのが嫌で逃げ出したのなら、そのまま逃げてい  れば何もしなくて済むわ。
なのに貴方はここに居 

 る。
何がしたいの?」
 
  輝夜の問いに鈴仙は、視線を地に落とし沈黙する。
何故戻ってきたのか……? それは鈴仙の執着そのものだった。
 
Reisen Udongein Inaba

「私には、行く所も帰る所もありません……
この永遠  亭以外は。月から逃げてきた時、そしてあの時……

 匿って下さった事、感謝しています」
 
Kaguya Houraisan

「感謝はしている、だけど戦うのは嫌。
世話になって

 おいてそれは通らないわよねえ」
 
Reisen Udongein Inaba 「……………………」  
Kaguya Houraisan

「でもこうして戻ってきたという事は、恩返ししてく  れる気になったという事ね。
嬉しいわ、それじゃあ

 早速明日から頑張ってもらうわよ」
 
Reisen Udongein Inaba 「その、私は……」  
Kaguya Houraisan

「あら、どうしたの?
 ほらほら、明日も早いんだか

 ら眠らないと体に障るわ」
 
  輝夜は鈴仙の手を取り、強引に屋敷へと引っ張ろうとする。
だが鈴仙の足はその場から動かない。
 
Kaguya Houraisan 「ちょっと、どうしたのよ。
早く帰りましょう」
 
Reisen Udongein Inaba 「っ……!?」  
  鈴仙は反射的に輝夜の手を振り解いてしまった。
その瞬間『しまった』という顔をし、慌てて頭を下げる。
 
Reisen Udongein Inaba 「も、申し訳ございません、そんなつもりでは……」  
Kaguya Houraisan

「……やれやれ、困ったわねえ。
ずっとそうやって逃

 げ続けるつもりなのかしら?」
 
Reisen Udongein Inaba 「逃げる……
って」
 
Kaguya Houraisan

「貴方は一体何から逃げているのか……?
 私が気づ

 いてないとでも思ってたの?」
 
Reisen Udongein Inaba

「……閻魔様に御叱りを受けてから、こちらに来て漸  く見なかった月の夢を見るようになりました。
それ

 でもしばらくすれば、また見なくなったのですが」
 
Kaguya Houraisan

「また見るようになった……
と。
原因は……
聞かなく

 ても分かるわね」
 
Reisen Udongein Inaba

「姫、私は……
私はどうすればいいのでしょうか?

 もう、分からなくなってしまいました」
 
Kaguya Houraisan 「甘ったれないで!」  
Reisen Udongein Inaba 「っ!?」  
  突如輝夜の口調が強く、厳しいものに変わる。
このような、感情をはっきりと露にした輝夜を見たのは初めてだった。
 
Kaguya Houraisan

「痛いのは嫌、
辛いのも嫌、
何も見たくない、
でも反  省はしてます……
そんな勝手が通ると本気で思って

 るの?」
 
Reisen Udongein Inaba

「思ってません!
 でも、じゃあどうしたらいいのか

 分からないんです……!」
 
Kaguya Houraisan

「……ねえ、貴方自身は一体どう思ってるの?
 月で

 の事、今の事」
 
Reisen Udongein Inaba

「正直……
よく分かりません。
でも一つだけ言えるの  は、自分勝手だと言われても、自分の居場所を守り

 たい……
そしてその場所がここだという事だけ」
 
Kaguya Houraisan 「何だ、もう分かってるんじゃないの」  
Reisen Udongein Inaba 「……え?」  
Kaguya Houraisan

「失敗したり、悔やんだりしない者なんか居ないわ。
 そしてそれが、本当に後悔すべき事だったのか……

 それはずっと遠い未来でないと分からない」
 
Kaguya Houraisan

「わざわざ反省とか後悔とかしなくたって、過去をあ  りのままに受け止めればいいのよ。
それが、今の貴

 方を形作るんだから」
 
Kaguya Houraisan

「貴方は今『守りたい』と言った。
……それが、貴方

 の出した自分なりの、過去への答えよ」
 
  表情は厳しく、しかし言葉は語り掛けるように優しく、丁寧に言葉を紡いでいく輝夜。
その一つ一つが、鈴仙の心に浸透していく。
 
Reisen Udongein Inaba 「そんな……
そんなのでいいんでしょうか。
私は」
 
Kaguya Houraisan

「あーもう煩いわね、私がいいって言ってるんだから  いいのよ!
 過去も今も、未来も私が……
ううん、

 私達が赦してあげるから」
 
Reisen Udongein Inaba 「姫……
私を赦して下さるのですか」
 
Kaguya Houraisan

「言ったでしょ、赦すも何も『過去より今』だって。
 さ、もう遅いから私はもう寝るわ。
貴方も早く寝な

 さい」
 
Reisen Udongein Inaba 「あ……
ありがとうございます!」
 
Kaguya Houraisan 「それじゃあお休みなさいね……
レイセン」
 
  欠伸をしながら輝夜は、屋敷へと戻っていった。
その後をゆっくりとついていきながら鈴仙は、空に浮かぶ月と星を見上げてふと歩を止める。
 
  忘れる訳ではない。
だけど後悔して俯いたりもしない。
これから鈴仙はどう自分を受け止め、向き合って生きていくのか?
 
  その姿を、そして彼女の行く先を、月は今日も静かに見つめているようだった。  
Reisen Udongein Inaba が復帰しました。

*E048






  白玉楼。
冥界に存在するその屋敷は、幽霊の統制を任されている西行寺家の住まう所である。
その庭は二百由旬の広さを誇り、普段は厳かな空気が立ちこめ、一転春には一面の桜が咲き乱れる。
 
  そんな、美しく雄大で幽玄な白玉楼の庭の管理を、一手に引き受けている西行寺家の庭師・魂魄妖夢は、今日も広い庭の中を右に左に、忙しく飛び回っていた。  
Youmu Konpaku

「ふぅ……
こんな所かなあ。
この庭は広すぎて、私一  人だと隅々まで手が回らない……
幽々子様も、手伝

 いの者を付けてくださればいいのに」
 
  軽い疲労感を息で吐き出しながら、日課である庭の手入れ後の剣の修行を始める。
妖夢の持つ二振りの剣、楼観剣と白楼剣を振るっていると、体に蓄積された疲れが汗と一緒に抜けていくような気がする。
 
Youmu Konpaku

「それにしても、まだちょっと暑いなあ……。
心頭滅  却の域にはまだ達していないという事か。
剣の稽古

 で流す汗は心地いいんだけどなあ」
 
  いかに幽霊の集まる白玉楼とはいえ、四季もあれば暑さ寒さも移り変わる。
剣を振るう度に珠が浮かび、跳ねて地に落ちていく。
;……その様子を、木の陰から見つめる一つの影があった。
 
Youmu Konpaku

「……で、そんな所で何をなさっているんですか?

 幽々子様」
 
Yuyuko Saigyouji

「あら、バレてたの。
さすがは妖夢ね、いかなる時で  も周囲に注意を払う事を忘れない。
良い心掛けだ

 わ」
 
  一人ごちながら、傍の陰から白玉楼の主にして妖夢の仕える主である、西行寺幽々子が姿を現した。
いつも飄々としていて、何を考えているのかその表情からは読み取れない。
 
Yuyuko Saigyouji

「でも、愚痴を零すのは頂けないわね。
こんなに広い  庭だからこそ、貴方に任せているというのに。
貴方

 じゃないと安心して成仏もしてられないわ」
 
Youmu Konpaku

「元々してないでしょう。
というか幽々子様、そんな

 所から聞いていらっしゃったのですか」
 
Yuyuko Saigyouji

「ええ、バッチリ。
毎日お仕事御苦労様、でも手伝い

 は付けないわよ」
 
Youmu Konpaku

「別に期待していませんし、必要もありませんからい  いですよ。
それより、幽々子様がわざわざこちらま

 でいらっしゃるなんて珍しいですね」
 
Youmu Konpaku

「ああ、剣の稽古をなさるのですね?
 申し訳ありま  せんが、今手元に竹刀がありませんから、一度御屋

 敷の方に戻らないと……」
 
Yuyuko Saigyouji

「違うわよ、それはまた今度。
今日は貴方を迎えに来

 たの」
 
Youmu Konpaku

「迎えに来たって、いつも仕事が済めばお屋敷に戻っ  ているじゃないですか。
迷子になったりなんかしま

 せんよ」
 
Yuyuko Saigyouji 「戦争よ」  
Youmu Konpaku

「いくら何でも子供じゃあるまいし
ってええぇっ!?
 戦争ってどことですか! 攻めてきたのは誰です

 か!?
 ああ、早く敵を斬り払わなければ」
 
Yuyuko Saigyouji 「落ち着きなさい、話を最後まで聞かない子ね」  
Youmu Konpaku

「幽々子様こそ、何を悠長に構えていらっしゃるので

 すか」
 
Yuyuko Saigyouji

「紫がね、面白い遊びを考えたって言ってきたの。

 から、私達も遊ぶわよ」
 
Youmu Konpaku

「紫様がですか?
 何だかとても不吉な予感がするの

 ですが」
 
Yuyuko Saigyouji

「何て事を言うのよ。
今度は堂々と、幻想郷中を巻き  込めるのよ?
 春を集めた時は皆から苛められたけ

 ど、これなら存分に遊んでも文句は言われないわ」
 
Youmu Konpaku 「あれは……
苛められても仕方なかったと思います」
 
Yuyuko Saigyouji

「と・に・か・く!
 せっかく紫が持ってきてくれた  話なんだから、私達も参戦するわよ。
貴方のその剣

 でバッタバッタと斬り倒していきなさいな」
 
Youmu Konpaku

「幽々子様、この剣は生身をバッタバッタと殺傷する

 為のものではありません」
 
Yuyuko Saigyouji

「桜の花舞い散る木の下で、繰り広げられる剣戟……
 まさに剣士の戦って感じがしない?
 それじゃあ、

 詳細はこの手紙に書いてるから目を通しておいて」
 
Yuyuko Saigyouji

「それから、後で結界の表に居るあの楽団にも声を掛  けておいてね。
あ~お腹空いたわ、今日のおやつは

 何かしら~♪」
 
  紫から受け取った例の封書を妖夢に押し付けると、幽々子はそのまま屋敷の方へと戻っていった。
後に残された妖夢が途方にくれる。
 
Youmu Konpaku

「あっ、幽々子様~!
 ……はぁ、またおかしな事に  なったなあ……。
大体、紫様も紫様です、悪戯にし

 ても規模が大きすぎます」
 
Yukari Yakumo 「だって一人より百人で遊んだ方が楽しいじゃない」  
Youmu Konpaku 「それはそうでしょうけどってわあぁぁぁー!?」  
  慌てて妖夢が後ろを振り返るのと、紫が首を引っ込めて隙間を閉じるのは、ほぼ同時だった。  
Youmu Konpaku

「ううう……
御二人とも、私をからかう為だけにやっ

 てる気がします……」
 
  両肩を限界までガックリ落としながら、幽々子のお使いを済ませる為に妖夢は飛び立っていった。  

*E049








Youmu Konpaku 「……という訳で、宜しく御願いします」  
Lunasa Prismriver

「……うーん、困ったわね。
私達の楽団は、傭兵部隊

 じゃないんだけど」
 
  桜花結界。
遥か上空にあり、冥界と顕界を分かつその結界は、幽々子の起こした春が来ない異変の際に破られ、未だそのままになっていた。
 
  そんな彼方と此方の曖昧な境で、人間なのか幽霊なのか曖昧な妖夢と、死んでいるのに騒がしい騒霊達が会話しているのは、ある意味必然と言える。  
  妖夢と話をしているのは、騒霊楽団三姉妹の長女、ヴァイオリニストのルナサ・プリズムリバーだった。  
Youmu Konpaku 「それはまあそうなんですけど、そこを何とか……」  
Lunasa Prismriver

「まあ、貴方の主人には普段からよくして頂いてます

 し、構いませんが」
 
Youmu Konpaku 「良かった……」  
Lunasa Prismriver

「……今、明らかにホッとしたわね?
 厄介事を押し

 付けられて良かったーみたいな」
 
Youmu Konpaku

「い、いえいえまさか。
……まあ、私一人よりは助か

 るなあなんて考えたりはしましたが」
 
Lunasa Prismriver

「貴方も苦労してるのね。
とにかく、私一人で決めて  しまう訳にはいかないので、妹達にも聞いてみます

 わ」
 
  そう言うとルナサはヴァイオリンを手に取り、ゆっくりと弓を引いて音を奏で始めた。
良く言えば落ち着いた、悪く言えば暗く沈みこむような旋律が、周囲に響き渡る。
 
Youmu Konpaku

「ああ、この、鬱で魂が満たされていく感覚は……。
 はぁ、幽々子様ももう少し真面目になって下されば

 いいのに……
はぁぁ……」
 
Lunasa Prismriver 「貴方が影響されてどうするのよ。
……あ、来たわ」
 
  離れた所に居たルナサの妹、トランペッターの次女メルラン・プリズムリバーがヴァイオリンの音を聴きつけて飛んできた。
トランペットを持ったまま手をバタバタとさせているのが、とても危なっかしい。
 
Merlin Prismriver

「姉さん、駄目よ~?
 姉さんのソロは、それはそれ

 は聴く人を大変な事にしちゃうんだから~」
 
Lunasa Prismriver

「人を危険物みたいに言うんじゃない。
そういうお前  のトランペットこそ、ソロで聴いたら酷い事になる

 じゃないの。
……ほら」
 
Youmu Konpaku 「ふうぅ…………
えっ?
 何ですか?」
 
Lunasa Prismriver

「何ですかじゃないわよ。
ほら、妹にも説明してやっ

 て、さっきの話」
 
Youmu Konpaku 「あ、はい、分かりました。
あのですね……」
 
Merlin Prismriver

「……
……
ふ~ん、困ったわねえ。
私達は演奏集団で

 あって、用心棒じゃないんですけど」
 
Youmu Konpaku 「同じ事言いますね」  
Merlin Prismriver

「そりゃあ姉妹ですから。
で、姉さんはどうするか決

 めたの?」
 
Lunasa Prismriver

「お前とリリカの意見を聞こうと思って。
私は別に構

 わないと思ってるけど」
 
Merlin Prismriver

「それなら私もオッケーよ~。
だって楽しそうじゃな  い?
 皆で集まってワイワイ騒ぐのって楽しいもの

 ね~」
 
Youmu Konpaku

「ありがとうございます。
何か勘違いしてるような気

 もしますが」
 
Lunasa Prismriver

「リリカにも聞いておかないとね。
仲間外れにすると

 煩いから」
 
Merlin Prismriver 「そうね~、
じゃあちょっと呼んでみましょうか」
 
  ルナサはヴァイオリンを、メルランはトランペットをそれぞれ構え、音を紡ぎ出す。
それは一見調和の取れているように聴こえたが、相反する二人の性質が不協和音のように、妖夢の心を包み込む。
 
Youmu Konpaku

「あぁ……
お休み欲しい……
あー体を動かすの楽しい  なー!
 ……はぁ、お手伝いさん付けて下さい幽々

 子様……」
 
Lyrica Prismriver

「ちょっとちょっと、二人だけで演奏したらこうなっ

 ちゃうから駄目よー」
 
  何だか滅茶苦茶な事になっている妖夢の傍に、いつの間にか三女、キーボーディストのリリカ・プリズムリバーが立っていた。  
Youmu Konpaku

「はっ……
あ、
今言った事、
幽々子様には内緒にして

 下さい……」
 
Lyrica Prismriver 「ふふん、どうしよっかなー」  
Merlin Prismriver 「こら、やめなさい。
困ってるじゃないの~」
 
Lyrica Prismriver

「そもそも困らせたのは、姉さん達のせいでしょう?
 ソロやデュオは危ないんだから。
で、何しに来た

 の?」
 
Lunasa Prismriver 「はい説明」  
Youmu Konpaku 「またですかぁ~……?
 ふぅ、実はですね……」
 
Lyrica Prismriver

「……
……
へぇ、いいんじゃない?
 お祭りみたいな

 ものなんでしょ?」
 
Youmu Konpaku 「……一人だけ反応が違いますね」  
Lunasa Prismriver 「リリカは変わってるから」  
Lyrica Prismriver

「姉さんに言われたくないわよ。
で、姉さん達はどう

 するか決めてるの?」
 
Merlin Prismriver 「二人とも賛成~」  
Lyrica Prismriver 「そうなんだ、良かったわね」  
Youmu Konpaku

「はい、ありがとうございます。
御迷惑をお掛けしま

 すが、宜しく御願いします」
 
  妖夢は三姉妹に向かって一度、深々と頭を下げると結界を越えて白玉楼へと戻っていった。  
Merlin Prismriver 「それじゃあ、ライブに備えて練習しないとね~」  
Lunasa Prismriver 「そうね、恥ずかしい演奏は出来ないもの」  
Lyrica Prismriver

「どんな奴も、私達のハーモニーにかかればイチコロ

 だもんねー」
 
Lunasa Prismriver 「さ、練習練習」  
  ルナサの合図に合わせて、三姉妹が思い思いに楽器を演奏し始める。
そのメロディーが美しいコードを形成し、誰もいない空の桜花結界に響き渡った。
 
  『幽冥の白玉楼』が結成されました。
を支配下に置きました。



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