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Sengoku Gensokyo: Translation Part 6

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Talk0

*E036






Letty Whiterock 「ふぅ……
あいつも少しは役に立つわね」
 
  レティはチルノに、湖の水面に氷のかまくらを作らせて、その中で涼を取っていた。
本来ならばまだ眠っている時期なので、横になると眠気が襲ってくる。
 
Letty Whiterock

「あー眠い……
全く、何でこんな所にいるのかしら。

 私も私だわ、あの時追い返せば良かったのに」
 
Letty Whiterock

「おまけにあいつだけならまだしも、何か小さいのが  また増えちゃったし……
妖精の中に妖怪が一人……

 私しか居ないじゃない!」
 
  一人で盛り上がって、一人で怒り出すレティ。
声が氷の壁に反射して、残響音となって彼女自身に返ってくる。
 
  煩さに耳を押さえながら、恨めしげに空を見上げると、悩みと頭痛の種である妖精達が、何やら騒がしく飛び回っていた。  
Daiyousei 「ちょっと待ってよ~チルノちゃーん」  
Cirno 「やーい、こっちこっち~」  
Luna Child

「もう逃げられないわよ!
 さあ、スターのリボンを

 返しなさい!」
 
Cirno

「げっ、ちょっと借りただけじゃないの。
大げさだな

 あ」
 
Sunny Milk 「何が大げさよ!
 リボンで蛙を包むんじゃない!」
 
Cirno

「凍らせてるから大丈夫だって!
 ちょっと持ち運び

 に使っただけじゃん」
 
Luna Child

「そういう問題じゃなーい!
 それなら自分のスカー

 トでも使えばいいじゃない」
 
Cirno 「やだよ、濡れちゃうし」  
Sunny Milk 「こっ、このお!」  
Cirno

「って訳で、もうちょっと借りるわね。
ばいばー……

 いたっ!」
 
  突然頭を誰かに叩かれて振り返ると、そこにはレティが仁王立ちしていた。  
Cirno 「ちょっとレティー、痛いじゃない!」  
Letty Whiterock

「もう、いい加減にしなさい!
 ほら、さっさと返す

 の!」
 
Cirno 「……はーい」  
  レティに叱られ、渋々手にしていたスターサファイアのリボンを差し出す。  
Sunny Milk 「えっと、
ありがとう、
コニーさん」
 
Letty Whiterock 「レティ!」  
Luna Child

「それじゃあスターの所に持っていくわね。
ありがと

 う、ポチ!」
 
Letty Whiterock 「誰が犬なのよ!
 ……あーもう、行っちゃったわ」
 
Daiyousei 「もー駄目だよチルノちゃん、そんな悪戯しちゃ」  
Cirno 「あんたまでそんな事言わないでよ」  
Daiyousei

「もっと分かりにくくて面白い悪戯にしなきゃ!
 例  えば、ルナちゃんが寝てる間に髪の毛をカチンコチ

 ンにして、中にお菓子を詰め込むとか」
 
Cirno 「あっ、それいい!
 夜になったらやってみよう!」
 
Daiyousei

「朝になったらルナちゃん、頭が重いー重いー、なー

 んて言っちゃったりして! アハハハハ!」
 
  ……と、今しがたレティに叱られた事もすっかり頭から抜け落ちて、次の悪戯を思い描きながらチルノと大妖精は飛び去っていった。
一人残されたレティは、力無く項垂れて眉間を押さえる。
 
Letty Whiterock

「……多くは望まないから、もっと静かにしてよ……

 全然落ち着けないじゃないのー!」
 

*E037




Cirno 「おーい、蛙凍らせに行こ!」  
Daiyousei

「えー、私はチルノちゃんみたいに蛙カチコチにでき

 ないから、つまんなーい」
 
Cirno 「うーん、それじゃあ、山の大蝦蟇見に行こうか」  
Daiyousei

「あ、それ見たい見たい!
 ……けど、ここから遠く

 に行っちゃうと、また怒られないかなー」
 
Cirno 「そんなの気にしてたら、何にもできないじゃん」  
Daiyousei

「でも怒られるのやだしなー。
あの妖怪さん、怒ると

 怖いんだよー?」
 
Cirno

「やっぱ怒られるかな?
 レティも一緒に来ればいい  のに……
んじゃあ、何か新しい悪戯でも考えよっか

 な」
 
Daiyousei

「さんせーい!
 んーとね……
人間が魚を釣ったら、

 釣り上げる前にカチコチに凍らせちゃうとか」
 
Cirno

「それ、もうやったよ……
面白かったけど、全身ずぶ

 濡れになって後が大変だった」
 
Daiyousei

「んーじゃあさじゃあさ、人間が釣りを始めたら、魚  が引っかかる前に釣り針を凍らせるの!
 魚と思っ

 たら氷が頭にゴツーン!」
 
Cirno

「それ面白そう!
 ……でも、水の中に潜るのやだな

 あ。また濡れちゃうよ」
 
Daiyousei 「だったら脱いじゃえばー?」  
Cirno 「そこまでしたくないわよ」  
Daiyousei

「んもう、あれこれ考えてないで、まずやってみよう

 よー」
 
Cirno 「無茶言わないでよ、あたいがやると思って!」  
Daiyousei

「えー、チルノちゃん最強なんだから、何とかならな

 いのー?」
 
Cirno

「う……
そ、そりゃあたいってば最強だから、濡れる

 のくらいどうって事無いけど……」
 
Daiyousei 「よーし、それじゃあ早速練習してみようよ!」  
Cirno 「えっ、れ、練習?」  
Daiyousei

「練習しとかないと、人間が来た時失敗するかもしれ

 ないじゃない。
ほらほら、やってみよ!」
 
Cirno 「わ、分かったわよ!
 ……えいっ!」
 
 

……
…………

……………………
 
Cirno

「ぷはっ! ケホッケホッ……
よく考えたら、別に練

 習なんて必要無いじゃない!」
 
Daiyousei

「ぷっ、あは、あはははははは……
チルノちゃんった

 らビショビショだあ、あはははは……」
 
Cirno

「……まさか……
よっ、よくも、よくもあたいを引っ

 掛けたな~!」
 
Daiyousei 「わー、怒らないでよ~、ただの悪戯じゃない~!」  
Cirno 「うるさいうるさーい!
 こうしてやるー!」
 
Daiyousei 「わー!
 氷投げないで、痛いいた~い!」
 
Letty Whiterock 「…………御願いだから、静かに寝かせて~……」  

*E038







Sunny Milk 「ねーチルノ、ちょっと聞きたいんだけど」  
Cirno 「ん、何よ?」  
Luna Child 「しばらくこっちに居る事になりそうだから」  
Star Sapphire

「別荘でも作ろうかと思ったんだけど、どこかにいい

 木は無いかしら?」
 
Cirno

「木なら湖の周りにいっぱい生えてるじゃない。
適当

 に探して好きなとこで作れば?」
 
Sunny Milk 「それじゃ、ちょっと行ってくるわね」  
Cirno 「あんまり遠くは行かないでよー」  
Luna Child 「……で、どこがいいかなあ」  
Star Sapphire

「ほら、あそこがいいんじゃない?
 枝の生え方とい

 い高さといい、ちょうど良さそう」
 
Sunny Milk 「そうね、あれにしましょう」  
Luna Child 「よいしょ」  
Sunny Milk 「こらしょ」  
Star Sapphire 「どっこいしょ……
っと。
これで良し!」
 
Luna Child

「と言っても、単に枝の上に木を敷き詰めただけだけ

 ど」
 
Sunny Milk

「そんな本格的に作ろうと思ったら、一日じゃ足りな

 いじゃない。
そんな事よりさ、見てよあれ!」
 
Star Sapphire 「わあ、いい眺め~!」  
Luna Child 「ここからだと、湖が一目で見渡せるわね」  
Sunny Milk

「涼しくて風も気持ちいいし、これからは夏になった

 ら毎年来ようよ!」
 
Star Sapphire 「そうね、今度ちゃんとした家を建てましょう」  
  ミシッ。  
Sunny Milk 「ん?
 今何か音がしなかった?」
 
Luna Child 「私何もしてないけど」  
Star Sapphire 「ルナが何かしてたら聴こえないんじゃない?」  
Sunny Milk 「まあいいか……
ん~、景色も風もいい気持ち!」
 
Luna Child 「ちょっと、狭いんだから横にならないで」  
  ミシミシッ。  
Sunny Milk 「…………」  
Star Sapphire 「…………
ミシッって、聴こえたような」
 
Luna Child 「私何もしてないわよ」  
  ミシミシミシッ。  
Sunny Milk 「わ、
わ、
わ!」
 
Luna Child 「崩れて~」  
Star Sapphire 「落ちる~!」  
  木の枝の上に敷かれた木の床は、上に載せた三人の主ごと、派手な音を立てて崩壊してしまった。  
Sunny Milk 「痛たたた……
あーあ、折角の別荘が壊れちゃった」
 
Luna Child 「サニーがいい加減な仕事するからよ!」  
Sunny Milk

「私のせいだって言うの!?
 そういうルナこそどう

 なのよ!」
 
Star Sapphire 「また始まった……
どっちもどっちでしょ」
 
Sunny - Luna 「あんたもよ!」  
Letty Whiterock 「……………………煩い……」  

*E039



  無名の丘。
昼尚涼しく、鈴蘭の花の咲き乱れるその丘は、その毒性と土地にまつわる悲しい過去から、人間はおろか妖怪ですら近寄る事もなく、命あるものの影さえ見る事の無い、寂しい場所。
 
  そんな鈴蘭の丘に、いつの頃からか一体の人形が捨てられ、幾許かの年月を経て意思を持ち、生を持ち始めた。
まるで、鈴蘭と共に散っていった数多の赤子の魂が乗り移ったかのように。
 
Medicine Melancholy

「ん~、スーさんは今日も元気かなー?
 来年に備え

 ていっぱい元気を蓄えておかないとねー」
 
  無名の丘を動き回る唯一の影、妖怪化した人形であるメディスン・メランコリーは、自身の力の源である毒を生み出す鈴蘭畑を、楽しそうに跳ね回っていた。  
  丘を訪れる者など滅多に居ないので、丘の全てが彼女の庭であり、家だった。
メディスンの動きに合わせて鈴蘭が左右に揺れる。
 
Medicine Melancholy

「今日もスーさんに異常は無し、っと。
……今日の御  仕事これで終わり……
あー退屈だなあ。
またあの耳

 の長い人達とか来ないかなー」
 
  一つそう言うと、鈴蘭の少し上で横になって体を伸ばす。
上に乗ると鈴蘭を潰してしまうので、彼女なりの小さな気遣いだ。
 
Medicine Melancholy

「昔は退屈だなんて思わなかったのになぁ。
……久し

 振りに、外の世界に行ってみようかなあ」
 
  一人で居る事が当然だった頃は、鈴蘭の咲き誇るその場所が世界の全てだった。
しかし、外の世界に触れる事で少しずつ意識が変化し始め、徐々に好奇心という未知の感情が芽生え始めていた。
 
Medicine Melancholy

「よし、そうと決めたら善は急げ、
ちょっと行ってく

 るねスーさん!」
 
  思い立ったが吉日、久々に丘を離れて遠出する事に決めたメディスン。
幸い旬の季節では無いので、気をつければ毒を疎んじられる事も無いだろう。
……自信は無かったが。
 
Medicine Melancholy 「それじゃあ行ってきまーす!」  
  飛び立つ彼女の小さな背中を見送るように、鈴蘭はそよそよと風に揺られていた。  

*E040




  無名の丘を出たメディスン。
特に目的地があった訳でも無かったので、ふらふらと適当に飛び回ろうかと考えていた。
そんな折、ふと一面黄色く染まった景色が目に飛び込んでくる。
 
Medicine Melancholy 「わー、向日葵がいっぱい。
気持ち悪いなぁ」
 
  あまり好きではない向日葵の群生に顔をしかめるメディスンだったが、そういや以前来た事のある向日葵畑だったっけ、と思いちょっと寄り道する事にした。  
Medicine Melancholy

「まあ別に、行き先が決まってる訳じゃないしねー。

 ……あー、近くで見るとやっぱり気持ち悪い」
 
  自分の背丈を優に越える向日葵を見上げながら、ゆっくりとその間を歩く。
頭上に開く無数の大輪は、どれも太陽の方に顔を向けており、それが一層メディスンに気味悪さを感じさせる。
 
Medicine Melancholy

「いくらお日様の花ったって、どれもこれも皆同じ方  を向いてたら、そりゃあ気味悪いよねぇ。
色も目に

 優しくないし、落ち着かないわ」
 
??? 「あらあら、この鮮やかな色がいいのにねえ」  
Medicine Melancholy 「だ、誰っ!?」  
  突然何者かに声を掛けられ、慌てて辺りを見渡す。
向日葵に遮られてよく見えなかったが、やがて向日葵の茎を掻き分けて一つの人影が姿を現した。
 
Yuka Kazami 「こんにちは、お久し振り」  
Medicine Melancholy 「…………
誰だっけ」
 
Yuka Kazami

「あらら、こんなに鮮やかで華やかで向日葵のような

 私を忘れるなんて、酷いわねえ」
 
Medicine Melancholy 「向日葵のようだから忘れたのね」  
Yuka Kazami 「残念だわ、こんなに可愛いのに」  
Medicine Melancholy 「それはどっちを指してるの?」  
Yuka Kazami 「両方」  
  向日葵の茎に手を置きながら、花を見上げて呟く。
確かに以前一度会った事はあるのだが、覚えていないのは彼女が人形頭だからかもしれない。
 
Medicine Melancholy

「……何だか前にも、こんな話をしたような気がす 

 る」
 
Yuka Kazami

「あら、思い出してくれたのね、嬉しいわ。
そういえ  ば、お名前聞いてなかったわね。
私は風見幽香、貴

 方は?」
 
Medicine Melancholy 「メディスン。
メディスン・メランコリーよ」
 
Yuka Kazami

「名は体を表す、道理で向日葵と合わない訳ね。
で、  メランコリックな貴方はどうしてここへ?
 お引越

 しかしら」
 
Medicine Melancholy

「どうしてスーさんを捨ててこんな所に住まなきゃな

 らないのよ。
退屈だからちょっと遊びに出ただけ」
 
Yuka Kazami

「あら奇遇ね、私も退屈してた所よ。
……と言っても

 貴方じゃ遊び相手には不足だしねえ」
 
Medicine Melancholy 「失礼ね、スーさんの毒は無敵なんだから!」  
Yuka Kazami

「冗談よぉ。
それに、毒でお花が枯れちゃ可哀想だし

 ね」
 
  別に争うつもりも無かったので、ちょっとからかってみただけなのだが、特に何事も無い平穏な毎日に退屈を感じていたのも事実だった。  
  『何か大きな騒動とか無いかなあ』という気持ちは、程度の差こそあれメディスンも幽香も同じだった。
花に水が必要なように、心にも潤いの雨が必要なのだ。
 
  ……そんな、心に渇きを感じている二人の頭上に、まさに恵みの雨と言える言葉が降り注いだのはその時だった。  
???

「そんなにお暇なら、とっても耳寄り御買い得なお話

 があるわよ~」
 
Medicine Melancholy 「え、なんか言った?」  
Yuka Kazami 「……上を御覧なさい」  
  言われて空に目を向けると、透き通るような青い空に亀裂の様なものが走っていて、そこから紫色をした影が降りてきた。  
Yukari Yakumo 「おはこんにちは、今日も陽射しが雨霰ね」  
Yuka Kazami 「晴れてるのか雨なのかはっきりしなさいよ」  
  幽香の顔つきがにわかに険しくなる。
幻想郷の中でも最強を自負し、言うに見合った実力を兼ね備えている彼女と渡り合える者は少ない。
 
  その貴重な相手が向こうからやってきたのだ。
……しかし、そんな幽香の様子に全く動じる様子も無く、紫は事も無げに軽くあしらう。
 
Yukari Yakumo

「あらあら、そんな怖い顔しないで。
今日はそんなつ

 もりで来たんじゃないから」
 
Yuka Kazami

「……つまらないわね、だったら一体何の用で来たの

 よ?」
 
Yukari Yakumo 「言ったでしょ、御買い得なお話があるって」  
Yuka Kazami 「うちは押し売りお断りよ」  
Yukari Yakumo

「あらそう?
 残念ね、折角いい退屈凌ぎになると思

 ったのに」
 
Yuka Kazami 「……タダなら聞いてあげる」  
Yukari Yakumo 「素直でよろしい。
そっちの貴方もお聞きなさいな」
 
Medicine Melancholy 「なあに?
 スーさんみたいに紫色の人」
 
Yukari Yakumo 「はいこれ。
お二人でどうぞ」
 
  そう言うと紫は懐から一通の封書を取り出し、手渡した。
これまで色々な所に配り回ってきた、例のゲームの参加案内である。
一通り読み終わった二人が顔を上げる。
 
Yuka Kazami

「何これ。
ていうか直接来たのなら、口頭で説明すれ

 ばいいのに」
 
Yukari Yakumo

「折角書いたのに勿体無いじゃない、それに楽だし。
 で、どうするの?
 いい退屈凌ぎのネタにはなると

 思うけど」
 
Medicine Melancholy

「うーん、よく分からないんだけど、つまりお友達を  誘って一緒に戦おうって事?
 私、友達なんてスー

 さんくらいしか居ないんだけどな」
 
Yukari Yakumo 「あら、居るじゃない。
すぐ隣に」
 
Medicine - Yuka 「えっ?」  
  紫の言葉に二人が向き合い、そしてすぐに抗議する。  
Yuka Kazami

「ちょっと、いつからこの子と私が友達になったの

 よ」
 
Medicine Melancholy 「鈴蘭と向日葵なんて水と油、人形と人間よ!」  
Yukari Yakumo 「それなら仲いいんじゃない」  
Yuka Kazami

「とにかく、こんなまどろっこしい事やってらんない  わよ。
暇潰しさせたいなら、今すぐ貴方が私と戦い

 なさい」
 
Yukari Yakumo

「もう、血の気が多いわね。
どうしても私とやりあい  たいって言うのなら、まずあの子に勝ってからにし

 なさい。
……博麗霊夢に」
 
Yuka Kazami 「霊夢……」  
Yukari Yakumo

「貴方、昔霊夢に負けてるでしょう?
 彼女に勝てな

 い妖怪が、私に敵う道理は無い」
 
Yuka Kazami

「ふぅん……
そこまで甘く見られちゃ黙ってられない  わね。
いいわ、先に霊夢を片付けてから遊んであげ

 る」
 
Yukari Yakumo

「そうそう、いい心がけよ。
そちらのお人形さんはど

 うするの?」
 
Medicine Melancholy 「えっ、私?
 私は……
うーん、よく分かんない」
 
Yukari Yakumo

「貴方、人形解放を目指してるんでしょ?
 だったら

 頑張って、味方をたくさん増やさないとね~」
 
Medicine Melancholy

「それはまあそうなんだけど……
どうしてそんな事を

 知ってるの」
 
Yuka Kazami 「……一体何を企んでいるのかしら」  
Yukari Yakumo

「まあいいからいいから。
それじゃあ二人とも参加す

 るって事で、頑張ってね~!
 あー忙しい忙しい」
 
  一方的に喋るだけ喋って、呼び止める間も無く紫は元来た隙間から帰っていった。
取り残された二人は、再度互いを見合う。
 
Yuka Kazami

「一体何なのかしら……
結局あいつの口車に乗せられ

 た気がするわ。
貴方はどうするつもりなの?」
 
Medicine Melancholy

「ん~……
人形解放と言われちゃ、黙ってはいられな  いわね。
仲間を集めて人間と戦うのは、避けて通れ

 ない道だもん」
 
Yuka Kazami

「それじゃあ、貴方がリーダーやってよね。
私そうい

 うの面倒臭いから嫌だし」
 
Medicine Melancholy 「ええっ、何それ!?」  
Yuka Kazami

「集団戦だからリーダーを決めろって書いてるのよ。
 人形がどうとか私は興味無いけど、ちょうどいいん

 じゃない?」
 
Medicine Melancholy

「それもそうね……
うん、分かった!
 人形達の地位

 向上と、人間からの解放の為にがんばろー!」
 
  外の世界を知り、外の住人を知り、そして自分を知る。
これは自分自身の成長と、同時に仲間を作るチャンスかもしれない、メディスンはそう感じていた。
 
  ……こうして、人形解放を目指すメディスンの戦いが幕を開けたのだった。  
Yuka Kazami 「…………ちょっと私は?」  
  『人形解放戦線』が結成されました。
を支配下に置きました。

*E041



Yuka Kazami

「お日様みたいな向日葵が~
お天道様覗いてる~

 お日様みたいなこの私~
向日葵皆目を逸らす~♪」
 
Medicine Melancholy 「何その歌」  
Yuka Kazami 「可愛いこの子達を綴った歌よ。
名曲でしょう?」
 
Medicine Melancholy 「よく分かんない」  
Yuka Kazami

「うーん、お人形さんに芸術は理解できなかったよう

 ね」
 
  幽香は首を傾げて嘯きながら、ポケットから一つの種を取り出して地面に埋めた。  
Medicine Melancholy 「何を埋めたの?」  
Yuka Kazami

「向日葵の種よ。
去年の種が一つ残ってたから、可哀

 想だと思って」
 
Medicine Melancholy

「今になってこんな暗い所に閉じ込められる方が、可  哀想だと思うけど。
もう花も咲かせられないんじゃ

 ない?」
 
Yuka Kazami

「そこで私の出番よ、まあ見てなさいな。
 早く芽が出ろ花の種~出ないと……
どうなるか分か

 ってるんでしょうね?」
 
  幽香が種を埋めた場所の上に手をかざし、何やら呪詛のような歌を口ずさむ。
すると、ポコッと瑞々しい芽が顔を出し、まるで早回しのようにグングンと生長して、瞬く間に周りの向日葵と同じ程の高さになった。
 
Medicine Melancholy 「わ、わ~!
 すごーい、こんな事出来るんだ!」
 
Yuka Kazami

「あらあら、そんなに喜んでもらえると私も嬉しい

 わ」
 
Medicine Melancholy

「じゃあさ、スーさんもお花、咲かせられるのかな

 あ?」
 
Yuka Kazami 「スーさん?」  
Medicine Melancholy

「あ、あっちの丘の鈴蘭の事なんだけど……
元気の無

 い子もいて、咲いたら嬉しいなあなんて」
 
Yuka Kazami 「んー、やめておいた方がいいと思うわよ」  
Medicine Melancholy 「えーどうしてー?
 そんなケチな事言わないでよ」
 
Yuka Kazami

「誰が欲望に塗れたどうしようもなくケチで下種な最

 低の妖怪ですって?」
 
Medicine Melancholy 「そこまで言ってないよぉ」  
Yuka Kazami

「フン、まあいいけど……
とにかく、確かにお花は咲  かせられるけど、鈴蘭はもうお花を咲かせたじゃな

 い」
 
Yuka Kazami

「お花が咲いて、そして散った後は実をつけて、そし  てまたお花を咲かせる為に力を蓄えるの。
次の季節

 の為にね」
 
Medicine Melancholy

「そっかー……
うん分かった、またお花が咲く季節ま

 で待ってる」
 
Yuka Kazami 「そう、素直な子は嫌いじゃないわよ」  
Medicine Melancholy

「それじゃあ私、スーさんの様子見てくるね!
 バイ

 バーイ!」
 
  幽香の言葉に納得した様子で、手を振りながらメディスンは飛び立っていった。  
Yuka Kazami

「前に会った時はあんなに素直だったかしら……?
 三日会わずんば刮目せよ、ね。
ほらほら皆も、あの

 子に負けず元気いっぱいいくわよ」
 
  一面の向日葵の花を太陽の方に向かせながら、幽香はその中を楽しそうにクルクル回っていた。  

*E042


  人間も妖怪も立ち寄らない無名の丘。
聴こえる音は、風になびく草葉の擦れる音だけという寂しい場所で、メディスンは生まれた。
いつ頃から意識を持ち始めたのかははっきりせず、気が付いたらそこに居た。
 
Medicine Melancholy

「人形解放かぁ……
どうすればいいのかなあ?
 ねぇ

 スーさん、どうしたらいいと思う?」
 
  鈴蘭は静かに揺れているだけで、何も答えてはくれない。  
Medicine Melancholy

「解放って言っても、私みたいに自分で動いてる人形  なんていないもんねぇ。
動かない人形か、操り人形

 しかいない」
 
Medicine Melancholy

「私が人間達から人形を解放してあげたら、人形達は

 喜んでくれるかしら、スーさん」
 
  鈴蘭は『分からない』とでも言っているかのように、左右に揺れている。  
Medicine Melancholy

「スーさんも分かんないか。
だよね、私だって分かん  ないもん。
でも、今よりもっと私が大きな心になっ

 たら、みんなついてきてくれるなあ」
 
  彼女の呟きもまた、ただ静かに空へと吸い込まれていく。
あまり塞ぎ込んだり、考えたりするのは好きではないので、今目の前にあるやれる事を一つずつクリアしていこうと、改めて心に決めたのだった。
 
Medicine Melancholy

「んー……
まあいいか、あれこれ考えてないで行動し  よっと!
 あのスーさんみたいな色した人の言う通

 り、たくさん味方を作らなきゃ」
 
Medicine Melancholy

「スーさんも応援してくれるよね。
また次の季節まで  には何とかしたいなあ……
人形の地位向上と解放目

 指して頑張ろう!」
 
  あの時の映姫の言葉は、ゆっくりと、だが確実にメディスンを変化させていっているのだった。  
  ……彼女はまだ、挫折を知らない。  



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