Wikia

Touhou Wiki

Sengoku Gensokyo: Translation Part 5

Talk0
7,242pages on
this wiki

*E029


Marisa Kirisame 「おーい」  
  いつもの様に、トレードマークの箒に乗って魔理沙が空から声を掛けてきた。
ゆっくりとホバリングしながら、霊夢の前に降り立つ。
 
Reimu Hakurei 「こんにちは、いいお天気ね」  
Marisa Kirisame 「おおぅ、一体どうした」  
Reimu Hakurei 「何がよ」  
Marisa Kirisame

「いや、あんまりにも普通な挨拶だったもんだから、

 面食らって」
 
Reimu Hakurei 「失礼ね、私だって挨拶くらいは普通にするわ」  
Marisa Kirisame

「そりゃまあそうだが。
てっきり閻魔か何かに怒られ

 たのかと思ったぜ」
 
Reimu Hakurei

「何で私が怒られなきゃいけないのよ。
品行方正、清

 く正しく慎ましく日々神職に励んでいるのに」
 
Marisa Kirisame

「その発言が既に、十分理由足りうる発言に聞こえる

 ぜ」
 
Reimu Hakurei

「どうでもいいわよそんなの。
これからその閻魔様と  やりあおうって言うのに、今からそんな恐れていて

 どうすんのよ」
 
Marisa Kirisame

「恐れてるって?
 冗談言うな、私だって日々正しく

 己の本分に励んでる」
 
Reimu Hakurei 「じゃあその背中の風呂敷包みは何?」  
Marisa Kirisame 「古跡の発掘帰りだ」  
Reimu Hakurei 「……盗掘、の間違いでしょ」  

*E030


  何かというと仕事をサボっては、三途の河の傍で長い休憩を取ったり、どこか別の場所に出歩いたりしている小町だったが、
やる気が無いという訳では無く、その日は真面目に幽霊を舟で彼岸に運んでいた。
 
Komachi Onozuka

「まあ、ただ座ってるだけで退屈だろうけどさ、向こ  う岸に着くまでのんびり寛ぐといい。
生前の事でも

 振り返りながらさ」
 
  ゆっくりと舟を漕ぎながら、乗客である幽霊に話しかける。
何の返事も無いのは幽霊が喋れないから仕方ないのだが、その為まるで一方的に喋り続けている様にも見えた。
 
Komachi Onozuka

「お客さんは知ってるか知らないかは知らないが、出  発前に頂いたこの河の渡し賃は、有り金全部が規則

 でね」
 
Komachi Onozuka

「時々居るんだよ、妙にゴネたり、一部を隠し持って  いたりするのが。
そういう事をされるとどうなるか

 知ってるかい?」
 
  幽霊に尋ねるが、喋れない為にただ体を震わせるだけだった。
その様子を見て小町が言葉を付け加える。
 
Komachi Onozuka

「あーそうだった、まだ喋れないんだよな。
向こう岸  に着くと閻魔様のお裁きがあるんだが、それを済ま

 せないと幽霊としての存在が確定されないんだ」
 
Komachi Onozuka

「だから、言いたい事は心の中で思ってくれればいい  よ。
あたいとお客さんの心の距離を近づければ、声

 が聴こえるからさ」
 
Komachi Onozuka

「……ん、そうそう、そんな感じで。
んで、どうなる

 かって言うと……
こうなるのさ」
 
 

小町の足元に転がっていた小石を、舟からやや離れた水面に投げ込む。

しばらくして水面が揺らいだかと思うと、舟の数倍はありそうな巨大な魚が口を開いて姿を現し、舟を揺らしまた沈んでいった。
 
Komachi Onozuka

「おおっとっと……
危ない危ない。
……とまあ、こう  いう訳さ。
金なんてここで使わなきゃあ、向こうに

 逝っても使い所が無いってのにねえ」
 
Komachi Onozuka

「見た感じ、お客さんはそういう事は無さそうで安心  したよ。
魂それ即ち心なりってね、お客さんの声は

 綺麗なもんだ」
 
Komachi Onozuka

「で、えーと……
どこまで話したっけ?
 渡し賃の話  だったかな。
生前の行いで死んだ時の持ち金が変わ

 るんだけどさ」
 
Komachi Onozuka

「お客さんのは、まあまあ普通かな。
多くもなく少な  くもなく……
それなりに穏やかな人生を送ってきた

 んじゃないか」
 
Komachi Onozuka

「ちょいと亡くなるのが早かったかもしれないが、そ  れはまあ仕方のない事だからね、自殺とかじゃなけ

 れば」
 
Komachi Onozuka

「ん、どうした?
 ……ああ、お裁きの話か。
やっぱ

 り不安かい?」
 
  返事の代わりに体をプルプルと震わせている。
声は小町にしか聴こえない。
 
Komachi Onozuka

「アハハ、そんな心配する事も無いさ。
何も舌を抜か  れる訳でもなきゃ、取って食われる訳でもない。

 直であれば、地獄に堕とされる事は無いよ」
 
  小町が喋り続けている間もゆっくりと舟は進む。
河は広く、まだ向こう岸は見えなかった。
 
Komachi Onozuka

「この辺で半分って所かな。
折角死んじまったんだし  さ、のんびりいこうじゃないか。
お客さんの話、も

 っと聞かせておくれよ」
 
Komachi Onozuka

「何を話せばいいのかって?
 何でもいいんだよ。
幽  霊の体験談はどんな話でも、あたいにとっては楽し

 い話さ」
 
Komachi Onozuka

「……何々、付き合ってたけど振られた彼女の話?

 アッハハハハ、そいつは是非聞いてみたいねえ」
 
  ……小町は決して、仕事が嫌でサボっている訳ではなく、寧ろこうして色々な魂と話が出来る船頭という仕事が好きだった。
そのせいで「仕事が遅い」と映姫に叱られるのだが、改めるつもりはあまり無かった。
 

*E031


  無縁塚は今も尚、紫の花を舞い散らせ、無縁のまま生を終えたゆたう死者の魂を解き放っていた。
例年ならとっくに散り終わっている頃なのだが、桜はまだ咲き続けている。
 
  そんな、生ある者はとても寄り付かないこの場所で、映姫は一人佇んでいた。
何を考えているのか表情からは読み取れないが、紫の桜と重なるその姿は、とても厳かなものに見えた。
 
Sikieiki Yamaxanadu

「輪廻転生、心を縛る茨から解放された魂は、やがて  私の元へと辿りつく……
いえ、その前に河を渡りき

 れるでしょうか」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「縁者無く命を落とした者は、河を渡る為の渡し賃を  持たない者もいる。
せめて生あれば、私が罪を裁く

 事も出来たのでしょうが」
 
  本来閻魔は、死してやってきた魂を裁くだけでいいのだが、映姫の性格上、少なくとも自分の目の届く範囲だけでも、手遅れにならぬよう罪の穢れを落とし、死後を善きものにしてやりたいと考えていた。  
  ……そして、すぐ傍に大きな罪を背負っている者が居るのに、それを見過ごすような真似は彼女にはできなかった。  
Sikieiki Yamaxanadu

「あの者は全く気付いていない……
周囲に目を配り、  感謝の心を持てなければ死後大きな罪となって己を

 押し潰してしまう」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「今のうちに気付かせる事が出来ればいいのですが、

 しかし……」
 
  不安は渦となり、心を覆う。
閻魔たる者、たかが一つの魂に固執するなどあってはならない事である。
だがそれでも気に掛けずにはいられなかった。
 
Sikieiki Yamaxanadu

「かの妖怪も、同じ事を危ぶんでこのような事を思い  立ったのでしょう。
中庸を保つのは大切な事だけど

 真の意味でただ一人で生きていける者などいない」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「今際の際にならないと分からないというのなら……

 私の手で罪を正さなければ」
 
  誰に話しかけるという訳でもなく、誰に聞かせるという事でもなく、小柄な体を桜に預け空を見やる。
時を惑わせるその色はまるで、彼女の心を表しているかのようであった。
 

*E032



  既に日も落ちて全く人気の無い博麗神社に、一つの人影があった。
数度辺りを見回すと、宙に顔を向け声を発する。
 
Sikieiki Yamaxanadu

「……そこに居るのでしょう、そろそろ出てきたらど

 うですか?」
 
??? 「……………………」  
Sikieiki Yamaxanadu

「かくれんぼに付き合う程、私は暇を持て余してはい

 ませんよ」
 
??? 「…………
あらあら、バレてたのね」
 
  何も無い所から声がしたかと思うと、空間に亀裂が走り、そこから紫色の人影が一つ、映姫の目の前に降り立った。  
Yukari Yakumo 「ご機嫌麗しゅうございますわ」  
Sikieiki Yamaxanadu 「気味が悪いのですが」  
Yukari Yakumo 「随分酷い事を仰いますわねえ」  
Sikieiki Yamaxanadu 「……本題に入りましょうか」  
  ニコニコと笑みを浮かべている紫だったが、その裏側には何か底知れない空気を漂わせている。
しかし映姫はそれに全く動じる様子も無く、毅然とした表情で紫を見据えていた。
 
Yukari Yakumo

「……流石はあらゆる魂に裁きを下す閻魔、どこまで

 も真っ直ぐで、穢れも揺らぎも無い眼差しですわ」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「その私でも、貴方の事はよく分からない。
真っ直ぐ  見ているつもりでも、いつの間にか視線は隙間へ飲

 み込まれて、貴方に届かない」
 
Yukari Yakumo

「心の境界、そう易々と踏み越えられる訳にはいきま  せんから。
……で、超えられましたか?
 あの子の

 心の境は」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「……境、それがあるならまだ良かったのかもしれな

 いけれど」
 
Yukari Yakumo 「ああ、やっぱり……」  
  さも予期していた通りと言わんばかりに、紫が溜息と共に天を仰いだ。
ガッカリしている様ではあったが、さほど落胆している風でもなかった。
 
Sikieiki Yamaxanadu

「貴方があの封書を持ってきた時は驚きましたが……
 確かに貴方の懸念通りのようです。
しかし……
随分

 と気に掛けているようですね」
 
Yukari Yakumo 「それはそうですわ、可愛いあの子の為ですもの」  
Sikieiki Yamaxanadu 「だから、このような大掛かりな仕掛けを?」  
Yukari Yakumo

「それは半分。
残り半分は、ただの暇潰しのお遊びで

 すわ」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「……まあ、いいでしょう。
だけど、目論見通りに事

 は進んでいないようですね」
 
Yukari Yakumo

「あの子の血は、幻想郷の異変を解決し、そして結界  を維持する為のもの。
それには他の影響を受けず、

 常に中庸でなければならない」
 
Yukari Yakumo

「だからセーフティとして、特定の何かに心を傾けな  いようになっている。
……けれど、あの子の場合、

 ちょっと度が過ぎてるわ」
 
Yukari Yakumo

「表向きは沢山の人間や妖怪達と交流を持っているよ  うに見えるけど、ね。
心は目の前の相手に向いてい

 ないのよ」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「家族、恋人、親友、生の過程で出会う者達……
その  全てが自分を生かす力の源となっている事に気付か

 ない、それはとても罪深い事です」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「このままでは、いつか生を全うした時、私の裁きす  ら受けられないかもしれない……
だからこそ、今の

 うちに是正してやりたいのですが……」
 
Yukari Yakumo

「はぁ……
困ったわねえ、これじゃあこのゲームを企  画した意義が無駄になってしまいますわ、半分。

 しは痛い目に遭ってみないと分からないのかも」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「乱暴な行為は肯定しませんよ?」  
Yukari Yakumo

「例えですわ。
……でも、それくらいでないと、あの  子はずっと独りぼっちかもしれない。
一人で何でも

 できてしまう強さが、唯一の不幸」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「……一つ質問しますが、どうしてそこまで肩入れす

 るのですか?」
 
Yukari Yakumo

「そりゃあ……
ねえ。
私はずっと、何代も見守ってき

 たから」
 
  そう言う紫の瞳は、目の前の映姫を通り過ぎて遥か、ずっと遠くを見ているようだった。
何か言葉を掛けようとしたその時、境内の奥屋の方から物音が聞こえた。
 
Yukari Yakumo

「あら、そろそろ引き上げ時かしら。
それではまた、

 御機嫌よう」
 
  紫の手が空に伸びると、現れた時と同じように空間がひび割れ、その隙間に体を潜らせてあっという間に姿を消した。
それと入れ替わるように、物音の主が正体を見せる。
 
Reimu Hakurei

「あーもう、さっきからおかしな妖気やらおかしな話

 し声やら、うるさいったらありゃしない!」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「こんばんは、起こしてしまいましたか」  
Reimu Hakurei

「もう、こんばんはって言う時間じゃないでしょう  が。
んで、何コソコソ話をしてたのかしら?
 居た

 んでしょさっきまで、紫が」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「長く生きれば、積もる話もあるのですよ」  
Reimu Hakurei

「ふーん……
まあ何でもいいけど、眠れないから静か

 にしてよね」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「ええ、私ももう引き上げますから。
……しかし、何

 を話していたか聞かないのですね」
 
Reimu Hakurei

「別に興味も無いし。
大体、聞いたって教えないんで

 しょ?」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「……確かに、そうですね。
それではお休みなさい」
 
Reimu Hakurei 「……変なの」  
  霊夢に背を向け、漆黒の空へと飛翔する映姫。
彼女と、そして紫の願いが叶う日は、まだ遠そうだった。
 

*E033



  人間の里を支配下に置いた博麗の勢力。
霊夢と魔理沙の二人は、その手中に収めた里を並んで歩いていた。
 
Marisa Kirisame 「さーて、とうとう地獄の門を開いたな」  
Reimu Hakurei 「何よそれ、不吉な事言うわね」  
Marisa Kirisame

「前に言ったろ?
 この里を押さえてからが本番だっ

 て」
 
Reimu Hakurei

「そんな事言ってたかしら。
まあ確かにあっちこっち

 隣接するから、今までのようにはいかないかもね」
 
Marisa Kirisame

「やられる前にやる、先手必勝一撃必殺の精神でいく

 か」
 
  魔理沙は息巻きながらブンブン腕を振り回し、偶々近くに居た里の者にぶつけて謝っている。  
Reimu Hakurei 「危ないからやめなさいって」  
Marisa Kirisame 「いててて……
で、どっからいくつもりなんだ?」
 
Reimu Hakurei 「そんなの決まってるわ、紫のやつをぶっ飛ばす」  
Marisa Kirisame

「まだ根に持ってたのか、お前って存外執念深いんだ

 なあ」
 
Reimu Hakurei 「この商売、舐められたら商売上がったりよ」  
Marisa Kirisame

「まあ別にいいけどな。
そうなると、白玉楼から攻め

 なきゃならない訳だが……
うーん」
 
Reimu Hakurei

「どうしたのよ、柄にも無く考え込む素振りなんか見

 せて。
似合わない事するわね」
 
Marisa Kirisame

「博麗の軍師様に向かってなんて言い草だ。
いやな、

 北の湖の方で妙な動きがあるらしいんだよ」
 
Reimu Hakurei 「湖って、あー紅魔館の方角の。
妙な動きって何よ」
 
Marisa Kirisame

「聞いた話によると、まだその季節でもないのに、湖

 周辺が冬みたいに寒いとか」
 
Reimu Hakurei

「あの辺が寒いのはいつもの事だけど……
冬みたいに

 ってのは確かにおかしいわね。
妖怪の仕業かしら」
 
Marisa Kirisame

「湖といえばあいつの根城だからな。
心配する程の事  でも無いだろうが、まあ気を付けてくれ。
大体、敵

 はそいつらだけじゃないしな」
 
Reimu Hakurei

「そうね、慎重に考えましょうか。
……それじゃ、頭  使ってお腹空いたし、御蕎麦でも頂いていきましょ

 う」
 
Marisa Kirisame 「私は天麩羅蕎麦でいいぜ」  
Reimu Hakurei 「誰が奢るって言った」  
Marisa Kirisame 「誰が奢れって言った」  
Reimu Hakurei

「私は冷奴蕎麦でいいわ。
豆腐を熱々の御蕎麦に載せ  るの。
あんたには……
そうね、西瓜を奢ってあげる

 わ」
 
Marisa Kirisame 「……奢らんぞ。
あと、西瓜も要らん」
 
  相も変わらず能天気で、気の抜けた会話を繰り広げる二人。
そんな彼女達の間を、涼やかな風が撫でていった。
 

*E034






Letty Whiterock

「ふぁ~あ……
ああ眠たい。
全くもう、何でこんな季

 節にこんな所に居るのかしら、私」
 
  ここは紅魔館に通じる湖。
その上空で、本来ならば冬にしか見る事の無い筈の妖怪・レティが、気だるそうに漂っていた。
 
Letty Whiterock

「ふー、他所よりはまだ涼しいとはいえ、やっぱり暑

 いわねえ……
ああ、体が溶けちゃいそう」
 
  湖上はひんやりと涼しいとはいえ、まだまだ冬の妖怪が快適と感じるには程遠い気温で、手をパタパタさせて少しでも涼を取ろうと苦心していた。
そんな所に、氷の妖精チルノが元気よく飛び込んできた。
 
Cirno 「レティー! ただいまー!」  
Letty Whiterock

「ただいまーじゃないわよ!
 私を無理矢理引っ張り

 出しておいて、すぐどこかに行って……」
 
Cirno 「レティー、レティー!
 ちょっと起きてよー」
 
Letty Whiterock 「ん、ふあ……
何よ、もうちょっと寝かせて……」
 
Cirno 「一大事なのよ、だからちょっと来て!」  
Letty Whiterock 「私の睡眠を妨害する事より大事な事なのかしら?」  
Cirno

「あたい達だけじゃちょっと不安だしさ、いいから来

 てよー!」
 
Letty Whiterock 「わ、ちょっと、引っ張らないで」  
Letty Whiterock

「……で、三日も帰ってこないし……
もう帰る所だっ

 たわよ」
 
Daiyousei

「アハハハ、チルノちゃんったら元気が有り余ってる

 からねー」
 
  レティの隣で、チルノが不在の三日間ずっとレティの話し相手となっていた大妖精が、あっけらかんと笑っている。  
Letty Whiterock 「一体どこに行ってたのよ?」  
Cirno

「んーとね、ちょっと仲間集めに行ってた。
もうすぐ

 こっちに来ると思うよ」
 
Letty Whiterock

「仲間?
 ……いい加減そろそろ、私を叩き起こして  くれた理由を知りたいわね。
もし下らない理由だっ

 たら……
承知しないわよ?」
 
  レティの周囲の気温がにわかに下がり始める。
が、その脅しは隣の大妖精を震えさせるだけで、チルノには効果が無かった。
 
Cirno

「下らなくなんかないって!
 えーと、紫色の変な妖

 怪が、こんな物をくれたの」
 
  胸元から一枚の髪を取り出して、レティに渡す。  
Letty Whiterock

「何……
『仲間を集めて博麗の巫女に勝てば、何でも

 願いを叶えます』
……何、これ」
 
Cirno

「何かよく分かんないんだけど、幻想郷で人間達とか  妖怪とかグループ作って遊んでるみたい。
んで、あ

 の小憎たらしいあいつに勝てば願いが叶うって!」
 
Cirno

「何を叶えてもらおうかなー。
蛙一年分とかいいかな

 あ。
一々蛙探して捕まえるの、面倒臭いし」
 
  皮算用に心ときめかせるチルノを前に、レティが怒りとも諦めともつかない複雑な顔をして一つ、息を吐いた。  
Letty Whiterock

「ふう……
で、私を起こしたのはもしかして、その為

 なのかしら」
 
Cirno

「そのとーり!
 ほら、いくらあたいが最強って言っ  ても一人じゃ身が持たないからさ、だから手伝って

 よ」
 
Letty Whiterock 「何で私が妖精なんかの頼みを聞かなきゃ……」  
Cirno 「レティは願い事とか無いの?」  
Letty Whiterock

「えっ?
 そうねえ……
冬がもうちょっと長くなると

 いいかな~とは思うけど」
 
Cirno

「ちょっとなんてせこい事言わずにさ、どーんと全部  冬にすればいいじゃない。
うん、あたいったら名案

 ね!」
 
Letty Whiterock 「いや別にそこまでは」  
Cirno 「ねーあんたは何か無いの?」  
Daiyousei

「え、私?
 んーとねえ、おうちがもっと広くなると

 いいな」
 
Cirno

「よーし、それじゃあ蛙と冬と湖を広くする為にがん

 ばろー!」
 
Daiyousei 「おー!」  
Letty Whiterock 「……はぁ」  
Cirno 「どーしたのレティ、元気無いね」  
Letty Whiterock

「そりゃ、こんな下らない事で起こされちゃね……

 だ冬じゃないし」
 
Cirno

「なーんだ、そんな事。
だいじょーぶ、もうちょっと

 したら冬になるし、あんまり変わらないって」
 
Letty Whiterock 「変わるわよ!」  
  チルノや妖精達と比べて、やる気の無さそうなのはレティだけだったのが、彼女にとっての不幸と言えるのかもしれない。  
  こうして、我が道を行くチルノの我侭によって、結局レティと湖近辺の妖精達は、否応無く巻き込まれていくのであった。  
  『最強妖精団』が結成されました。
を支配下に置きました。

*E035




  レティと大妖精を巻き込んで意気上がる、チルノ達妖精の集団プラス妖怪一匹。
そんな彼女達の根城である霧立ち込める湖に、三つの物影が近づいてきていた。
 
???1

「ねえ、本当にこっちの方向で合ってるのよね?
 何

 だか随分遠回りしたような気がするんだけど……」
 
???2

「まさか、妖精が道に迷う訳無いでしょ。
普段は来な

 い場所だからちょっと手間取っただけよ」
 
???3 「……それを迷ったと言うんじゃないかしら」  
???2

「うるさいなあ、大体あいつが湖としか言わなかった

 から悪いんじゃないの。
湖ってどこの湖なのよ」
 
???3

「少なくとも、里の近くの『池』じゃないと思うわ。
 ……というか、幻想郷で湖なんて一つしかないじゃ

 ない」
 
???2

「可能性は一つずつ潰していきましょう、って言って

 たのは誰よ」
 
???1

「もうっ、いいじゃない別に。
急げとも言われなかっ  たんだから、ゆっくり行きましょ。
……ほら、見え

 てきたよ」
 
  物影のうちの一つが前方を指差す。
眼前に、間違っても池とは到底呼べないような水景色が広がっていた。
靄のような霧のせいで、遠くはよく見えない。
 
???2

「ふぅ、着いたようね。
……で、あいつはどこに居る

 のよ?」
 
???3 「ここのどこかじゃない?」  
???2 「探せって言うの?
 ……帰ろうか」
 
???1

「ここまで来たのに帰ったらバカみたいじゃない。

 あ適当に周ってみましょ」
 
Daiyousei 「おーい、チルノちゃ~ん」  
  その日も特に目的無く、ふわふわと湖上を漂っていたチルノの所に、大妖精が声を上げながらやってきた。  
Cirno 「ん?
 どうしたの?」
 
Daiyousei

「なんかね、見回りの子が言ってたんだけど、見慣れ

 ない三人組がここに来たんだって」
 
Cirno 「あ、あいつらかな。
やっと来たわね」
 
Daiyousei 「あれ、知り合いなの?
 どうする?」
 
Cirno 「そいつら、今どの辺にいるの?
 連れてって!」
 
Daiyousei 「うん、こっちだよー」  
  大妖精の先導に従ってしばらく行くと、霧の向こうに三つの人影が見えてきた。
どうやら向こうもこちらに気付いたらしく、チルノ達の方まで近づいてくる。
 
Cirno 「ちょっと、遅いでしょ!」  
???2

「遅いでしょ、じゃないわよ!
 湖としか場所言わな

 かったくせに!」
 
Cirno 「湖と言ったらここしか無いじゃない」  
???3 「ほら、だから言ったじゃない」  
???1 「言ったのにねえ」  
???2 「ちょっと、私一人だけ悪者にする気!?」  
  目の前のチルノ達をそっちのけで口論を始める三人に、チルノの後をついてきたレティが呆れながら声を掛ける。  
Letty Whiterock

「……お取り込みの所申し訳ないけど、貴方達は一体

 どちら様?」
 
  ……その、至極当然なレティの質問に、三人はピタッと動きを止め、目を輝かせながら振り向いた。  
???1 「えっ、私達が何者で」  
???2 「潔く名を名乗れと」  
???3 「仰るのね?」  
Letty Whiterock 「いや別にそこまでは」  
???2

「仕方ないわね、誰だと聞かれたら教えてあげようじ

 ゃない。
いい、よーく聞くのよ!」
 
???1

「輝ける日の光の妖精、サニーミルク!

 得意技は光の屈折!」
 
???2

「静かなる月の光の妖精、ルナチャイルド!

 得意技は音を消す事!」
 
???3

「降り注ぐ星の光の妖精、スターサファイア!

 得意技は気配探知!」
 
Sunny - Luna - Star 「人呼んで……
光の三妖精参上ーーー!!」
 
Letty Whiterock 「お帰り下さい」  
Luna Child 「ちょっと即答!?」  
Sunny Milk 「私達、そこの妖精さんに誘われて来たんだけど」  
Letty Whiterock

「チルノ、この前の『仲間集めに行ってた』って、も

 しかしてこの子達の事?」
 
Cirno

「うん、こいつらの強さは、戦った事のあるあたいが  よく知ってるからね。
ま、最強のあたいに敵うほど

 じゃなかったけど」
 
Luna Child

「戦ったって、ただのケンカじゃない。
……まあ何で

 もいいけどさ、とにかく私達にかかれば」
 
Star Sapphire 「どんな人間や妖怪が相手だって」  
Sunny Milk 「必殺の悪戯でイチコロよ!」  
Letty Whiterock 「……………………」  
Sunny Milk 「……」  
Luna Child 「…………」  
Star Sapphire 「………………」  
Sunny - Luna - Star 「……………………
光の三妖精参上ーーー!!」
 
Letty Whiterock 「分かったから」  
Daiyousei

「何だか賑やかで楽しそうだねー。
これからよろしく

 ね!」
 
Luna Child 「よろしくー!」  
Cirno 「あたいには敵わないけど、頑張ってよ!」  
  ワイワイガヤガヤ賑やかに、まるで小さな子供達が沢山集まったように騒がしくなる。
妖精だから子供みたいでもさほどおかしい事は無いのだが、一人仲間外れの妖怪だけが、ついていけずに眉間を指でおさえた。
 
Letty Whiterock 「はぁ、私は子守の為に起こされたのかしら……?」  
  レティの苦悩はまだ続くのだった。  
Star Sapphire が加わりました。



Around Wikia's network

Random Wiki