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Sengoku Gensokyo: Translation Part 4

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*E022







  近頃の慧音は、紫提案の幻想郷陣取り合戦に参加した為、里の見回りや若人集との話し合いに時間を取られてしまい、本来の仕事である歴史の編纂や授業といった作業が滞っている事が、一つの悩みとなっていた。  
  そこで里の者が「何も無い時は自分達に任せてくれ」と気を回してくれたので、漸く自分の事に時間を取れるようになった。
積もり積もった紙の山に溜息を漏らしつつ、ある程度片付いた所で気分転換に外へ出る。
 
Keine Kamishirasawa

「ふう……
やはり日々の事を欠かすと駄目だな。

 んん~……」
 
  両の手を組み、天に向かって伸びをする。
まだ強い太陽の日差しに目を細めながら空を見上げると、
何やら黒い物が横切ったような気がした。
速すぎてよく分からなかったが、ゆっくりと何かが舞い落ちてくる。
 
Keine Kamishirasawa

「ん……?
 これは……鴉の羽か。
しかしどこからこ

 んな物が……?」
 
  訝しげに空を見渡すが、どこにも鴉の姿は無く、鳴き声も聴こえない。
どこからか風で流されてきたのだろうと思い、目線を落とそうとした矢先に、
また先程の黒い物体が空を横切った。
 
Keine Kamishirasawa

「何だ……?
 よく見えないが、妖怪か何かの類だろ

 うか?」
 
 

里を襲いに来たのかと考え、臨戦態勢をとる。

その黒い物体は突如慧音の真上で止まったかと思うと、いきなり急降下してきた。
間一髪後ろに飛び退ると、目前に着地したそれは濛々と砂煙を上げる。
 
Keine Kamishirasawa 「くっ……
何だ!?」
 
??? 「痛たたた……
ちょっと勢い付けすぎました」
 
Keine Kamishirasawa 「何者だ!」  
  いつでも次の手を打てるよう、腰を落とし膝を折り曲げて身構える。
やがて砂煙も落ち着き、徐々に人影が目視できるようになってくると、うっすらと浮かび上がった人影が近づいてきた。
 
??? 「あ、どうも、お久しぶりです」  
Keine Kamishirasawa 「ん……
何だ、誰かと思えばいつぞやの」
 
???

「御呼びが無くても即参上、どこより早く真実をお届  けします!
 伝統と幻想の新聞記者『射命丸文』、

 只今参上です!」
 
Keine Kamishirasawa 「……御帰り下さい」  
Aya Shameimaru 「うわ、即答ですか」  
  すっかり警戒を解き、脱力してこの珍客を出迎える。
黒い物体の正体は、以前にも取材を受けた事のある鴉天狗「射命丸文」だった。
 
Aya Shameimaru

「折角飛んできたのに、そんな応対は冷たいじゃない

 ですか」
 
Keine Kamishirasawa

「一体何しに来たんだ?
 取材なら先日受けた時に一

 通り済んだと思うが」
 
Aya Shameimaru

「何でも今、面白い事になってるらしいじゃないです

 か」
 
Keine Kamishirasawa 「面白い事……?」  
Aya Shameimaru

「私達の間では、その話題で持ちきりです。
幻想郷を  舞台にした陣取り合戦なんて、こんな面白そうな事

 私が飛んでこない筈がないじゃないですか」
 
Keine Kamishirasawa 「御帰り下さい」  
Aya Shameimaru 「まだ何も言ってませんー」  
Keine Kamishirasawa

「記事にしようと思って取材に来たのだろう?
 それ

 なら張本人の所に行けばいいだろうに」
 
Aya Shameimaru

「あの妖怪さんはどこにいるのかよく分からないので

 す」
 
Keine Kamishirasawa 「なら神社の巫女の所とかだな」  
Aya Shameimaru 「そんなに邪険にしないで下さいよ」  
  参戦はしたものの、特に目立った動きがある訳でもなく、このブン屋がどうしてここに来たのか真意を測りかねていた。  
Aya Shameimaru

「大体、折角の一大イベントなのに、御山のみんなは  我関せずで傍観なので、それじゃ私が面白くありま

 せん」
 
Keine Kamishirasawa 「私もあまり面白くないが」  
Aya Shameimaru

「しかしそこで引き下がっていては、記者として名が

 廃ります。
という訳で飛んできました!」
 
Keine Kamishirasawa 「いや、話が見えないのだが」  
  当惑する慧音にお構いなく、捲し立てる文。
だが次の文の言葉は、慧音をさらに惑わせるのに十分だった。
 
Aya Shameimaru

「いい取材、いい記事を書くにはやはり、実地体験が  一番なのです。
という事で、私も貴方達の陣営に参

 加したいと思います」
 
Keine Kamishirasawa 「……………………
は?」
 
Aya Shameimaru

「鴉天狗たるこの私が手伝うのですから、これはもう

 大勝利間違いなしです」
 
Keine Kamishirasawa 「いやいやいやいや、一体何を企んでいる」  
Aya Shameimaru

「企んでるとは酷いですね、有能な人材……
いや妖怪

 材は多い方がいいじゃないですか」
 
Keine Kamishirasawa

「悪いが、損得抜きでそういう事をするとは思えない

 のだが」
 
  慧音が疑いの眼差しを向けると、文は開き直ったのか誇らしげに胸を張って答えた。  
Aya Shameimaru

「あらら、バレてしまっては仕方がありません。
ええ

 そうです、勿論タダでという訳にはいきません」
 
Aya Shameimaru

「もうそろそろ、完成するそうじゃないですか。アレ

 が」
 
Keine Kamishirasawa 「アレ?」  
Aya Shameimaru

「ええ、幻想郷を余す所無く綴った大変貴重な資料で

 ある『幻想郷縁起』の事です」
 
Keine Kamishirasawa 「……それを一体、どうしようと?」  
Aya Shameimaru

「あ、そんな怖い顔しないで下さいー。
つまりです   ね、交換条件として、幻想郷縁起が完成したら一番

 に見せてほしいのです」
 
Aya Shameimaru

「そして、それをどこよりも誰よりも早く記事にした  いのです。
ああ、これは凄い特ダネの香りが漂って

 きます!」
 
  幻想郷縁起……
稗田家の先代、つまり阿求の一代前が編纂してから随分経つ。
それの脱稿をスクープできるとなれば、確かに記者としては垂涎物だろう。
 
Keine Kamishirasawa 「なるほど……
しかし私の一存で決める訳には」
 
Aya Shameimaru

「今の稗田の当主は、阿求さんと言いましたっけ?

 ちょっと御挨拶してきます!」
 
  そう言い残すと文は、来た時と同じ速さで里を駆け抜けていった。
あっという間に姿が見えなくなり、突風に煽られた里の人達は、鎌鼬でも出たのかとざわめきあっている。
 
Keine Kamishirasawa

「おい、待てっ……
行ってしまった。
全く……
これだ

 から妖怪というものは自己本位で困る……」
 
  慧音は半分妖怪だがもう半分は人間なので、実に妖怪らしい文の振る舞いに苦言を漏らす。
だが、戦力としての文は確かに大きなものだった。
 
Keine Kamishirasawa

「とは言え……
うーむ……
まあ阿求殿なら上手い具合

 に追い返してくれるだろう」
 
  ……それが慧音の楽観的な希望に過ぎなかった事を知るのに、さほど時間はかからなかった。  
Hieda no Akyu 「……それでは、御願いしますね」  
Aya Shameimaru

「分かってますー。
話せない事もありますが、お話で

 きる範囲で今度ゆっくり」
 
Hieda no Akyu

「ええ、山の事なんてなかなか知る機会もありません

 し、楽しみです」
 
Aya Shameimaru 「私も幻想郷縁起の完成が、今から待ち遠しいです」  
Hieda no Akyu 「うふふふふふふ」  
Aya Shameimaru 「あはははははは」  
  そんな話し合いがなされていた事を慧音は、当然、全く知る由が無かったのだった……。  
Aya Shameimaru が加わりました。

*E023


Aya Shameimaru 「号外~、号外~」  
Reimu Hakurei 「いたっ」  
  静かな午後の一時を楽しんでいた霊夢だったが、その静寂はあっさりと破られてしまった。
霊夢の頭に、文が空から投げた新聞が直撃する。
 
Reimu Hakurei 「まーたあの出鱈目記者ね、今度は何よ」  
  落ちてきた新聞を拾い上げて読んでみる。  
Reimu Hakurei

「えーと……
幻想郷でも最強最速との名も高い、鴉天  狗の射命丸文氏がこの度、人間の里を守護する上白

 沢慧音氏らと手を組む事が明らかになった」
 
Reimu Hakurei

「この件により人間の里は大幅な戦力アップとなり、  敵対勢力である博麗神社側の苦戦は免れない物とな

 るだろう……
何これ」
 
Reimu Hakurei

「記者ってのは、自分の事も記事にするのかしら……
 ていうかわざわざこんな物を作って持ってくるなん

 て、もしかして挑発してるつもり?」
 
Reimu Hakurei

「……いい根性してるじゃない。
ボッコボコにしてや

 るわ!」
 
  分かってても売られたケンカは買うのが主義なので、元々自分達の方から里にケンカを売った事は棚に上げて、闘志を燃え上がらせる霊夢であった。  

*E024





Hieda no Akyu 「はあ……
皆さん頑張りますねえ」
 
  里の中でも特に戦える者達は、広場に集まって日々修練を積んでいた。
偶々その横を通りがかった阿求が、その様子を見て感嘆の声を漏らす。
 
Villager 「あ、こんにちは阿求様。
お買い物ですか?」
 
Hieda no Akyu 「あ、はい。
今その帰りです」
 
  阿求の側に居た一人の青年が、阿求に声を掛けた。
手にしていた、先程買い物してきた荷物を降ろして答える。
日差しの暑さも相まって、それだけで軽く眩暈がした。
 
Hieda no Akyu 「ふぅ……
暑いですねえ」
 
Villager 「そうですね、阿求様にはお辛いでしょう」  
Hieda no Akyu 「ええ、まあ……
あまり体が丈夫な方ではないので」
 
Villager

「阿求様も御一緒にどうですか?
 体を鍛えれば暑さ

 にも強くなれますよ」
 
Hieda no Akyu

「体を動かすのはどうにも苦手なもので……
皆さんの

 様にはとても」
 
  誘ってもらったものの、丁重に御断りする。
運動よりも机に向かって筆を握っている方が好きだし、向いていると思っていた。
 
Villager

「そうですか、残念です。
……しかし、阿求様も慧音  様達と一緒に戦うそうじゃないですか、危ないです

 よ」
 
Hieda no Akyu 「ええ……
まあ、体を鍛えると思って頑張ります」
 
Villager

「ハハハ、そうですね。
危なそうな時は、俺達がお護

 りするんで安心して下さい」
 
Hieda no Akyu 「はい、ありがとうございます」  
Villager

「それじゃあ俺もそろそろ戻りますんで、これで失礼

 します」
 
  体格のいい青年は爽やかに挨拶すると、広場の方に戻っていった。
見るからに元気が有り余ってる風の青年の姿に、羨望の混じった眼差しを向ける。
 
Hieda no Akyu

「いいですねぇ、羨ましいです。
何分私は、転生の準

 備が整わない内はあまり無茶もできませんから」
 
  万一、準備が完了する前に命を落とすような事があった場合、以後の転生は保証できなくなる。
稗田家が潰えるような事になった場合、一体誰が幻想郷縁起を継いでいくというのか。
 
Hieda no Akyu

「……でも、不謹慎だとは思いますが……
ちょっと

 楽しみです」
 
  それはトレーニング等よりよっぽど危ない事の筈なのだが、記憶や記録を遡っても例を見ない一大イベントだけに、心はやるものがある阿求だった。  

*E025


Marisa Kirisame 「よう、聞いたぜ。
というか読んだぜ」
 
Reimu Hakurei 「いきなり何の話よ」  
Marisa Kirisame 「私の所にこんな物が来たんだよ」  
  魔理沙はスカートの中に手を突っ込み、何やらごそごそしたかと思うと、一つの紙の束を霊夢に向かって投げた。  
Reimu Hakurei 「……ああ、これ。
てかどこに仕舞ってるのよ」
 
Marisa Kirisame

「利便性を追求した結果だ。
その反応から察するに、

 お前の所にも来たのか?」
 
Reimu Hakurei

「ええ、頭にぶつけてくれたわ。
全く、大切な脳味噌

 に傷でも付いたらどうしてくれるのかしら」
 
Marisa Kirisame

「却って回転が速くなるんじゃないか?
 ……私が悪

 かった、だからその御符を仕舞ってくれ」
 
Reimu Hakurei 「あんたは一々一言多いのよ」  
  そう言うと霊夢は、巫女装束の襟元へと手を突っ込んで御符を仕舞った。  
Marisa Kirisame

「お前もどこに仕舞ってるんだよ。
……まあそんな事  よりだな、いい根性してるぜ。
誰に断って幻想郷最

 速を謳ってるんだ?」
 
  文の新聞をペシペシ叩きながら嘯く。
一体いつから最速の名は許可制になったのだろうか?
 
Reimu Hakurei 「別にあんたの専売特許でもないでしょうに」  
Marisa Kirisame

「何を言う、これは私への挑戦状に違いないぜ。
売ら

 れたケンカは買うのが華ってな」
 
Reimu Hakurei 「……まあ、私に迷惑掛からない程度に頑張ってね」  
  軽く釘を刺しつつ、やる気になってるなら勝手にさせとこうと思う霊夢だった。  

*E026











Hieda no Akyu 「大変です慧音様~!」  
  今日は授業も無く静かな寺子屋の中で一人、穏やかに静寂を楽しんでいた慧音であったが、その平穏は阿求の逼迫した声によって破られた。  
Keine Kamishirasawa

「一体どうしました、阿求殿がその様に取り乱すとは

 珍しい」
 
Hieda no Akyu 「とりあえず、来て下さい!」  
Keine Kamishirasawa 「こっ、こら……
分かったから引っ張らないでくれ」
 
  阿求に引っ張られて慌てて立ち上がると、阿求は先導するように走っていった。
慧音も見失いように後を追いかける。
すると、しばらく行った所で何やら人だかりができていた。
 
Hieda no Akyu 「あちらです!」  
Keine Kamishirasawa 「む、一体どうしたというのだ」  
  人を掻き分けて中へと進む。
すると、数人の怒気が入り混じった声と、聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。
漸く二人が人だかりの中心部に辿り着くとそこでは、里の若者等と文が何やら口論していた。
 
Villager 1 「このっ、もう一回言ってみやがれ!」  
Aya Shameimaru

「何度でも言ってあげます、
私達妖怪と比べて貧弱な  人間なんて足手纏いですから、貴方達の手は必要あ

 りません」
 
Villager 2 「黙って聞いてりゃ好き勝手に言いやがって!」  
Aya Shameimaru

「そもそも私は、
公正な取引と利害の一致の結果ここ  にいるだけであって、人間の事なんかどうでもいい

 のです」
 
Aya Shameimaru

「それで怒るのは勝手ですけど、
じゃあここに居る人  間の中で誰か一人でも、私の速さに付いてこれる人

 は居るんですか?」
 
Villager 3 「ぐっ……」  
Aya Shameimaru

「ほら誰も答えられないじゃないですか。
やっぱり私

 一人で十分なのです」
 
Hieda no Akyu 「……
とまあ、こんな感じで……」
 
Keine Kamishirasawa 「……十分過ぎる程よく分かった」  
  阿求が慌てて飛び込んできた理由は、説明を聞かなくてもこの一連のやり取りで十二分に理解できた。
どうしたものかと溜息を吐きかけるが、このままにしておく訳にもいかないのでグッと堪える。
 
Keine Kamishirasawa 「何をしている、どちらともやめないか」  
Villager 1

「あ、慧音様!
 聞いて下さいよ、この妖怪ときたら

 勝手な事ばかり……」
 
Aya Shameimaru

「勝手でも何でもないです、私は当然の事を言ったま

 でです」
 
Keine Kamishirasawa 「あーいい、聞かなくても大体把握したから」  
  しかめっ面を浮かべて手を振ってみせる。
面倒臭そうにしていると思われたかもしれないが、実際面倒な事になってるな、と内心気の滅入っている慧音だった。
 
Keine Kamishirasawa 「……まずはだな」  
  慧音は文の方を向き、顔を見据える。
文の表情は自信たっぷりで、自分は常に正しいと言わんばかりのものだった。
 
Keine Kamishirasawa

「目的や理由が何であれ、ここに居る以上は周りの者

 と協調してもらわないと困る」
 
Aya Shameimaru

「弱い人間に足を引っ張られる位なら、私一人の方が

 よっぽど効率も勝率も上がるのです」
 
Villager 2

「さっきからこの調子なんですよ慧音様、この野郎と  きたら俺等の事を弱いだの使えないだの言いたい放

 題で」
 
Aya Shameimaru 「女性に対して『野郎』は適切な言葉ではないです」  
Crow 「カーカー!」  
  文の肩に止まっている使い魔の鴉も、主人に同調するかのように囃し立てる。  
Villager 3 「くそっ、鴉まで馬鹿にしやがって!」  
Keine Kamishirasawa 「分かったからやめないか!」  
  また再燃しそうになり、慌てて両者を手で制する。
しかし、これはどうしたものか……
と考えあぐねていた所、文の方から一つの提案があった。
 
Aya Shameimaru

「言葉で言っても分からないのでしたら、実力で分か  らせた方が早そうです。
ペンを解さないなら剣を使

 いましょう」
 
Keine Kamishirasawa 「何をするつもりだ?」  
Aya Shameimaru 「鬼ごっこです」  
Keine Kamishirasawa 「……………………
は?」
 
  思いがけず飛び出してきた単語に、思わず間の抜けた声を上げる慧音、そして里人達。
そんな一同を無視して、文はさらに言葉を続けた。
 
Aya Shameimaru

「私は足の速さに自信があります。
と言いますか事実  幻想郷最速でしょう。
そんな私に指一本でも触れる

 事ができたなら、認めてやらないでもないです」
 
Aya Shameimaru

「もし、奇跡が起こって私に触れる事ができたら、何  でも黙って言う事を聞いてやります。
でも駄目だっ

 たら、これからも私の好きにしますよ」
 
Villager 1 「自分に一番有利な勝負じゃねえか!」  
Aya Shameimaru

「そんなの勝負の世界では当然です。
尤も、どの勝負  でも人間に負けるとは思ってませんが、殴り合いや

 弾幕ごっこよりは平和的だと思うのです」
 
Keine Kamishirasawa 「うーむ……
まあ、一理あるが……」
 
Aya Shameimaru 「別に嫌ならいいです、私の不戦勝ですから」  
  売り言葉に買い言葉、更に血の気の多い里の者達がここまでコケにされて黙っている筈もなく、いきり立って文の勝負に受けて立つのだった。  
Villager 2 「やってやろうじゃないか、目にもの見せてやる!」  
Villager 3 「そうだそうだ!
 ……慧音様、構いませんよね?」
 
Keine Kamishirasawa

「む……
仕方あるまい、それで双方納得するのなら、  やってみるといい。
但し、どちらが勝っても負けて

 も後腐れ無しだ」
 
Aya Shameimaru 「そうです、大人しく私の言う事を聞くのですよ」  
Villager 1 「もう勝った気でいやがる……
今に見てろよ!」
 
Keine Kamishirasawa 「ルールは里から出ない事、いいな?」  
Aya Shameimaru 「分かりました、それじゃあ始めましょう」  
  言うが早いが、文は空高く舞い上がり宙に静止する。
そして一度地上に目をやると、空を我が物顔に飛び回り始めた。
それを見た里の者達も、後を追いかけるように地上を飛び立つ。
 
Aya Shameimaru 「んー、やっぱり大空は気持ちがいいです!」  
Villager 3 「余裕ぶりやがって!」  
Aya Shameimaru 「すいっと」  
  若者の一人が足首を抑えようとするが、済んでの所でかわされてしまう。  
Villager 2 「……おらっ!」  
Aya Shameimaru 「そんなせこい手は通用しません」  
  さらにもう一人が背後から忍び寄って掴みかかるが、何の事も無くすり抜けられる。  
Villager 1 「くそっ、待て!」  
Aya Shameimaru 「待てと言われて待つ妖怪は居ませんー」  
  そしてまた一人が全速力で文を追い掛けるが、文のスピードに全く追いつく事もできず引き離されていく。
まさに大人と赤子……
実力差も、そして結果も歴然としていた。
 
Hieda no Akyu 「あらら……
全然勝負にもなってませんねえ……」
 
Keine Kamishirasawa 「困ったものだ……
どうしたものか」
 
  確かに戦力としての射命丸文の存在は大きい。
が、それ以上にマイナスを生み出すようでは何の意味も無い。
そして誇り高き鴉天狗である文に、人間との協調性を求めるのは、土台無理な話のようだった。
 
  ……………………  
Aya Shameimaru 「……もう飽きました。
これ以上は時間の無駄です」
 
Villager 1 「はぁっ、はぁっ……
う、うるせえ!」
 
  四半刻が経過した。
が、依然誰一人として、文を捉える事はできない。
初めの内こそ面白がって見物していた野次馬達も興味が失せたのか、慧音と阿求を残して周囲には誰も居なくなっていた。
 
Keine Kamishirasawa

「まあ、こんなものか……
鴉天狗の速度についていけ

 る人間など、そうはおるまい」
 
Hieda no Akyu 「でも、このままでは……」  
  阿求が心配する通り、全く歯が立たないまま勝負が終わってしまっては、今後文は一切人の言葉を聞かなくなり、単独行動するようになるだろう。  
  そうなれば里の者達も面白くないだろうし、特に人間が妖怪に対抗する為に必要な協調と団結が、根底から崩れ落ちる事にもなりかねない。
それだけは避けたい事だった。
 
Aya Shameimaru 「全く、いくらやっても無駄ですよ!」  
  そう言い残すと文は、一瞬のうちに遠くへ飛び去ってしまった。
あっという間に文の姿が小さな点となり、もう誰も追い掛ける気力は残っていないようだった。
 
Keine Kamishirasawa 「ここまでか……」  
  ……慧音も里の者達も皆諦めかけたその時、阿求がポソッと口を開く。  
Hieda no Akyu

「あの……
慧音様、私も手伝っても宜しいのですよ 

 ね?」
 
Keine Kamishirasawa

「ん、ああ、まあそれは構わないが……
失礼だが、今

 更阿求殿一人加わった所でどうにかなるとは……」
 
  慧音の言う事は至極尤もであったが、阿求は気色ばむ事も無くニコリと笑って見せた。  
Hieda no Akyu

「以前お話しませんでしたか?
 勝敗を分けるのは知

 恵だと……
まあ、お任せ下さい。
みなさーん!」
 
  阿求の脳裏に浮かんだ閃きを実行に移すべく、呆然と宙に浮かんでいた里の者達を呼び戻し、一人一人に指示を出していく。  
Hieda no Akyu 「……で、私が…………
ですから、皆さんは……」
 
Villager 3 「なるほど……
でも、そう上手くいきますかねえ」
 
Hieda no Akyu

「それは分かりませんが……
やるだけの事はやってみ

 ましょう。
では慧音様、後程また」
 
  そうこうして、阿求の指示を受けた者達が四方に散っていく。
そして阿求も何処かへと走っていった。
 
  …………………………………………  
Aya Shameimaru

「あ~あ、退屈です。
これじゃあ生まれたての雛天狗

 にだって勝てません」
 
  里の端の空で、横になって愚痴を零す文。
まさか人間などに後れを取るとは微塵も思ってはいなかったが、こうも歯応えが無いというのも計算外だった。
 
Aya Shameimaru

「余計な取引なんてしないで、初めから阿求さんとだ

 け交渉すれば良かったですかねえ」
 
  文のお腹の上に乗っている使い魔鴉に声を掛ける。
鴉はカーと一鳴き、気の無い返事を返した……
かと思ったら、突然パタパタと羽ばたきだした。
 
Crow 「カァッ」  
Aya Shameimaru 「ちょっと、どうかしたのですか?」  
Crow 「カーッ!」  
Aya Shameimaru 「あ、こらっ、待ちなさい!」  
  文の制止も聞かず、鴉はある一点目指して矢のように飛んで行った。
後を追いかけていくと、何やら地上の一箇所が、チカチカと光っていた。
どうやら鴉はその光に釣られているようだ。
 
Crow 「カーッ」  
  鴉と、僅かに遅れて文がその一点に降り立って周りを見渡すと、光の正体は、地面に撒かれた硝子の破片や子供が遊ぶ硝子玉だった。
それを一つ一つ嬉しそうに鴉が銜えたりして遊んでいる。
 
Aya Shameimaru

「こら、意地汚い事はやめなさい、恥ずかしいです。
 でも、さっきまでこんな物は無かったと思うのです

 が…………
あ」
 
Villager 1 「今だっ!」  
  何かに気が付いた文が、慌てて鴉を捕まえて宙に戻ろうとしたのと、更にその頭上を網が舞ったのは同時だった。
逃げ損ねた鴉が足と羽を絡み取られて、情けない声を上げる。
 
Crow 「カーッ!? カーッ!」  
Aya Shameimaru 「ああっ、もう……
知らないです!」
 
Villager 2 「それっ!」  
Aya Shameimaru 「わわっ」  
  鴉の救出を諦めて飛び立とうとしたが、更に第二投が文を襲った。
間一髪身をかわし体勢を立て直すものの、
 
Villager 3 「これでどうだ!」  
Aya Shameimaru 「えっ、ちょっと……
きゃあっ」
 
  間髪入れず第三投が上から覆い被さり、逃れようとしたものの足首を引っ掛けてしまい、その場でバタリと転んでしまった。
急いで網から足を抜こうとしたが、その時誰かに腕を掴まれた。
 
Hieda no Akyu 「……はい、捕まえました。
私達の勝ちです」
 
Keine Kamishirasawa 「うむ、勝負あったな」  
  阿求と慧音の勝利宣言を受け、文を取り囲んでいた里の者達が歓声を挙げた。
だが、一人納得のいかない文が猛抗議する。
 
Aya Shameimaru 「こんな騙し討ち、卑怯です! ずるいです!」  
Keine Kamishirasawa 「負けは負けだ、潔くしろ」  
Aya Shameimaru

「負けじゃないです、大体誰も私に追いつけなかった

 でしょう!」
 
Keine Kamishirasawa 「いい加減にしないか!」  
Aya Shameimaru 「……っ!?」  
Keine Kamishirasawa

「確かに個人個人の力では、お前に敵う人間は居ない

 かもしれない。
だがそれは、一対一の場合だ」
 
Aya Shameimaru 「うぅっ……
しかしですね……」
 
Keine Kamishirasawa

「いくら自分だけが強くても、敵が複数で、今回のよ  うに頭を使われたら今みたいな姿を晒す事になるか

 もしれんのだぞ?
 力だけあっても意味は無い!」
 
Aya Shameimaru

「うう~…………
分かった、分かりました!
 私の負

 けでいいです!」
 
Keine Kamishirasawa

「ならば、これからは里の者と足並みを揃えるように

 な」
 
Aya Shameimaru

「分かってます!
 誇り高い鴉天狗は、約束を反故に

 したりなんかしません!」
 
  半ば投げやりに叫ぶ文。
その声を聞いてまた、周囲が盛り上がる。
その熱気とは裏腹に不貞腐れる文だったが、何も言う事ができなかった。
そしてその矛先は、未だ網の中でもがいている鴉に向けられる。
 
Aya Shameimaru

「この……
馬鹿鴉!
 こんなつまらない手に引っかか  って恥ずかしいです!
 お前なんて焼き鳥屋に売り

 払ってやります!」
 
Crow 「カーッ!? カーッ!」  
Keine Kamishirasawa 「やれやれ……
しかし阿求殿も考えましたね」
 
Hieda no Akyu

「はい、わざと見えるように光り物を反射させれば、  鴉さんを光で誘って、誘き寄せられるんじゃ無いか

 と思いまして……
鴉の習性ですね」
 
Keine Kamishirasawa 「これで少しは懲りてくれるといいのだが……」  
  里の人間達や阿求、そして慧音でも、一対一の勝負で真正面から文に挑めば勝ち目は無いだろう。
だが、それらを補って尚余りあるのが知恵であり、仲間である。
 
  そのどれか一つが欠けても、文を捕らえる事は不可能だっただろう。
その性質故に徒党を組む事の無い妖怪達と比べて、人間のそんな所を素晴らしく思う慧音だった。
 

*E027



Aya Shameimaru

「で、慧音さんはどんな望みを叶えてもらうのです

 か?」
 
Keine Kamishirasawa 「……ん?」  
  日も落ちて、夜の帳もすっかりおりた里の中、慧音と阿求と文の三人が、取り留めの無い雑談に興じていた。  
Keine Kamishirasawa 「望みとは?」  
Hieda no Akyu

「紫様の仰るには、何でもこの戦ごっこで最後まで勝  ち残ると、何でも一つ望む事を叶えて頂けるそうで

 すよ」
 
Keine Kamishirasawa 「……何と言うかまあ、分かりやすい釣り餌だ」  
Aya Shameimaru 「阿求さんはどんな望み事があるのですか?」  
Hieda no Akyu

「え、私ですか?
 んー、そうですね……
まだお会い  した事の無い沢山の方々と、お友達になれればいい

 ですねえ」
 
Aya Shameimaru 「おお、友達百人できるかな、ですね」  
Hieda no Akyu

「私はあまり長生きができませんから……
妖怪の方と  お友達になったら、百年余り経って転生しても、ま

 たお会いできます」
 
Hieda no Akyu

「私を知ってくれている方が待っていてくれるという

 のは、それはとても嬉しい事なのです」
 
Aya Shameimaru

「なんだかしんみりしてしまいました。
まあ心配しな

 くても、転生したら喜んで飛んできますよ」
 
Keine Kamishirasawa 「スクープだからな」  
Aya Shameimaru

「そうそう、また号外を出して仲間に自慢できるので  す……
って、それじゃあまるで私が損得でしか動か

 ないみたいじゃないですか」
 
Keine Kamishirasawa 「それじゃあ、お前の望みは何なのだ?」  
Aya Shameimaru

「私ですか?
 私の望みなんて決まってます、皆さん  のあんな事やそんな事を根掘り葉掘り取材して、記

 事にしたいです」
 
Keine Kamishirasawa 「取材ならもう散々して周ったんじゃないのか?」  
Aya Shameimaru

「あんなのはまだぬるいです。
今度は、もっと遠慮な

 くビシビシいきますよ」
 
Hieda no Akyu 「恐ろしいです……」  
Aya Shameimaru 「そういう慧音さんはどうなのですか?」  
Keine Kamishirasawa

「え、私か?
 私は……
突然聞かれても困るのだが、  そうだな……
もっと子供達が、真剣に授業を聞いて

 くれればよいな」
 
Aya Shameimaru 「そんなもの、今すぐにだって叶えられるのです」  
Keine Kamishirasawa 「何?」  
Aya Shameimaru

「記事のネタにならないかと思って、授業の様子を覗  いた事があるのですが、あれじゃあ子供達も退屈し

 て当たり前です」
 
Aya Shameimaru

「もっと分かりやすく、楽しいものにしないと駄目で

 すよ」
 
Keine Kamishirasawa 「む……
しかし、歴史という大事な事をだな……」
 
Hieda no Akyu

「んー、確かにちょっと分かり辛いかもしれません。
 私や慧音様ならよくても、子供達にとってはどうで

 しょうか……」
 
Keine Kamishirasawa

「阿求殿まで……
そんなにつまらなかったのか、私の

 授業は……」
 
  慧音はうなだれて、ガックリと力無く肩を落とした。
やはりショックだったようだ。
 
Aya Shameimaru

「だから、これからはもっと面白楽しくいきましょ 

 う。
突然歌ってみるとか」
 
Hieda no Akyu 「赤い布に飛び掛かってみるとか」  
Aya Shameimaru

「あ、それいいですね、それで皆さんも囃し立てたり

 して。
オーレって」
 
Keine Kamishirasawa 「……………………」  
Hieda no Akyu 「ああ、額を擦りながらこちらを見ないで下さい!」  
Aya Shameimaru 「ぼ、暴力反対ですー!」  
  ……次の日、頭にできたコブを痛そうに擦っている文と阿求の姿が見られたとか見られなかったとか。  

*E028





  再思の道。
彼岸花が咲き誇り、人間も妖怪も、そして幽霊や亡霊も滅多に見かける事の無い、静かで寂しい所。
そこに幻想郷の死神、小野塚小町はいた。
 
  本来ならば三途の川の船頭として、訪れる魂を待たなければならないのだが、幻想郷を埋め尽くす程に溢れかえった霊達も、およそ彼岸へと送り終わり、一時期の忙しさが嘘のように暇ができてしまった。  
Komachi Onozuka

「あ~あ、偶には息抜きも必要だねえ。
ああも辛気臭  いと息が詰まってしまうよ。
……まあここもあんま

 り変わらないけど、空気が違う」
 
  という訳で、決してサボっているのではない。
……が、頻繁にあちらこちらをフラフラするので、どう見てもサボっているようにしか見えない。
仕事が暇になった事も、サボりを後押ししていた。
 
Komachi Onozuka

「あんまり静かだと、耳がキーンってなっちまう。
 ちょいと中有の道まで足を伸ばすかな、あそこは賑

 やかでいい。
今日はどんな出店が来てるかな?」
 
  暇なのをいい事に、仕事の事がすっかり頭から抜け落ちている。
まだ見ぬ華やかな風景に心躍らせて体の向きを変えた刹那、背後から呼び止められて酷く驚く。
 
??? 「小町様~」  
Komachi Onozuka

「きゃん!
 違います違います、サボっていた訳では

 ありませ……
ん?」
 
  全身を硬直させながらぎこちなく振り向くと、そこには怖い上司ではなく、一体の幽霊がふわふわと漂っていた。
体の力が抜けていく。
 
Komachi Onozuka

「なんだ、びっくりさせないでくれよ……
んで、あた

 いに何か用かい?」
 
Phantom

「あ、はい。閻魔様が小町様を御呼びです。
今すぐ来

 るように、と」
 
Komachi Onozuka

「げ……
四季様の使いか。
もしかして、遊んでるのが

 バレた?」
 
Phantom 「いえ、そこまではちょっと……」  
Komachi Onozuka

「んまあ、そうだよな。
しかし何だろう急に……
お小  言……
うーん、呼び出されてまで四季様に怒られる

 ような事はしていない筈なんだが」
 
Phantom

「とにかくお伝えしましたからね。
……ああそうだ、

 閻魔様は無縁塚の方でお待ちです」
 
Komachi Onozuka 「え、そっちかい?
 んー、ますます何だろうなあ」
 
  職場を放り出して遊び歩いている事が、十分怒られる理由足りえるのだが、いつもの事だったので全く意識から抜け落ちていた。
先に戻っていった幽霊の後を追いかけながら、首を傾げる小町だった。
 
  ……無縁塚。
木に囲まれた空間の、その中心に生え立つ桜の木は未だ紫の花弁を散らしていて、未だ解き放たれぬ魂が残っている事を示していた。
 
  その、紫の涙を流す桜の木の下で、閻魔様……
四季映姫・ヤマザナドゥが小町を出迎えた。
 
Sikieiki Yamaxanadu 「御苦労様です、小町」  
Komachi Onozuka

「ええ、
今すぐ来い、との事だから急いで来ましたけ

 ど、一体どうしたんですか?」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「その前に……
貴方はまた、サボっていましたね」
 
Komachi Onozuka 「うっ、
い、
いやあ何の事だか」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「使いの者から聞いたけど、三途の川に居なかったそ  うじゃないの。
職場に居ないという事はサボってた

 って事でしょう」
 
Komachi Onozuka 「あいつめ、余計な事を……」  
Sikieiki Yamaxanadu 「何か言いましたか?」  
Komachi Onozuka

「いえいえ何でも。
そんな事より、四季様自らわざわ  ざこんな所までおいでになるとは、何か大事件でも

 ありましたか」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「まずはこれを」  
  映姫に一通の封書を渡される。
それは例の、紫が方々で配りまわっているのと同じ物だった。
書面の文体は大きく異なっているようだが。
 
Komachi Onozuka

「あらら、恋文ですか?
 アハハ、四季様も隅に置け

 ませんねえ」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「どうしてそうなるのです」  
Komachi Onozuka

「ほら、待ち合わせといえば相場が決まってるじゃあ

 ありませんか。
伝説の木の下で……」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「……どうやらキツい御灸が必要なようね」  
Komachi Onozuka 「やだなぁ、冗談ですってば。
えーと……」
 
  拝啓から始まる一文は、他の者の所に送られた物とはまるで違う、丁寧で遜った文章だった。
一通り読み終わって、映姫の方に顔を向ける。
 
Komachi Onozuka 「なるほど……
で、これがどうしましたか」
 
Sikieiki Yamaxanadu 「我々も参加します」  
Komachi Onozuka 「ええぇ~っ!?」  
  唐突に素っ頓狂な声を上げたものだから、映姫の方が驚いて体を震わせる。  
Sikieiki Yamaxanadu

「ちょっと、驚かさないで。
何か驚くような事でもあ

 った?」
 
Komachi Onozuka

「いえその、四季様がこのような戯れ事にノリノリと

 いうのも、
何と言いますか、
意外って思いまして」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「何か勘違いしているようですが、遊ぶ事が目的では

 ありませんよ」
 
Komachi Onozuka 「だったら何でまた」  
Sikieiki Yamaxanadu

「勝者は何でも望みを叶える、とあります。
つまり、

 私の言葉を黙って聞かせられる、という事です」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「全く、死後地獄に堕ちる事の無いよう慮って、生あ  るうちに裁きを与えているというのに……
誰も彼も

 嫌な顔をするんだから」
 
Komachi Onozuka

「そりゃまあ、説教を進んで聞きたいってな人はいな

 いでしょう」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「説教と取って耳を塞ぐ事が問題なのです。
幸い一時  の忙しさも一段落しましたし、閻魔の出張サービス

 といきましょうか」
 
Komachi Onozuka 「はぁ、ほんとに仕事熱心ですねえ」  
Sikieiki Yamaxanadu

「貴方がいい加減すぎるだけです。
それでは貴方も、

 宜しく頼みますよ」
 
Komachi Onozuka 「えっ、あたいもやるんですか?」  
Sikieiki Yamaxanadu

「当然よ、貴方は私の部下でしょう。
それとも何か不

 都合な事でも?」
 
Komachi Onozuka 「いえいえ喜んで」  
Sikieiki Yamaxanadu 「……今、堂々と仕事をサボれると考えたでしょう」  
Komachi Onozuka 「そっ、そんな事考えてないですよ」  
Sikieiki Yamaxanadu

「浄玻璃の鏡の前でも同じ事が言えますか?
 ……まあいいです、船頭の仕事もきっちりやるんで

 すよ」
 
Komachi Onozuka

「えぇ~?
 どっちも一遍には無理ですよ、体は一つ

 しかないんだから」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「いいからやる!
 普段遊んでばかりなんだから、少

 しは仕事しなさい」
 
Komachi Onozuka

「酷い事言うなあもう。
まああんまり期待はしないで

 下さいよ」
 
Sikieiki Yamaxanadu

「偶には、期待の半分くらいは働いてほしいんだけど

 ねぇ」
 
  かくして、楽園の最高裁判官『四季映姫・ヤマザナドゥ』と、三途の水先案内人『小野塚小町』が、新たに戦線に加わったのだった。  
  『彼岸の番人』が結成されました。
を支配下に置きました。



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