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Sengoku Gensokyo: Translation Part 10

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*E064


;
  幻想郷であって幻想郷ではない、人の記憶から失われて久しい一つの世界がある。
誰も立ち入る事が無く、誰も出て行く事の無い完結した場所。
だがそれは確かに存在していた。
 
  そして世界が在れば当然、そこに住まう者達が居る。
ただひっそりと静かに、閉じられた平和な箱庭の内側で穏やかに暮らしていた……
のだった、
が。
それも既に過去の事になりつつあった。
 
△△△ 「○○○様、おやつをお持ちしました」  
○○○

「あら、ありがとう△△△ちゃん。
メニューは何かし

 ら?」
 
△△△

「は、マッドケーキでございます。
クルミたっぷり 

 の」
 
○○○

「わあ、私の好きなものを持ってきてくれるなんて、

 気が利くじゃない。
流石は△△△ちゃんね」
 
△△△ 「お褒めに預かり恐縮です」  
  目の前に置かれたケーキに悪戦苦闘しつつ、上目で言葉を続ける。  
○○○

「ガツッ、モグッ……
ひょっほ……
ガチッ、
はひゃふ

 ひるわ……
コリッ……」
 
△△△

「喋るか食べるかどちらかになさって下さい、何を言

 ってるのか分かりません」
 
○○○

「ゴクッ……
だってこれ固いんだもの、ナイフも欲し

 いくらいだわ」
 
△△△

「申し訳ございません、次は気をつけます。
……でで  すね、○○○様、一つお耳に入れたい事があるので

 すが」
 
○○○

「パクッ、ムシャッ……
ゴクン、
なあに改まって、ど

 うかした?
 また誰かが喧嘩でもしてるのかしら」
 
△△△ 「いえ、向こうの世界の事なのですが……」  
○○○

「またお外を眺めてたの?
 △△△ちゃんも好きよね  え、あんまり外を見ちゃいけないって言ってるの 

 に」
 
△△△

「申し訳ございません、ただ近頃、妙な動きがあった

 ものですから」
 
○○○

「妙な動き……?
 わざわざ報告してくるくらいだか

 ら、この世界を脅かす事態になりそうなのかしら」
 
△△△

「そこまでのお話かどうかは、まだ定かではありませ  んが……
どうも、外側……
幻想郷で、いくつもの勢

 力が戦争ごっこらしきものを始めているようです」
 
○○○

「戦争?
 これはまた穏やかじゃないわね、あんな世

 界でも内紛とかあるのかしら?」
 
△△△

「あくまで擬似的なものの様ではありますが……
一応

 お耳に入れておこうかと思いまして」
 
○○○

「まあ、向こうが何してようと私達には関係ないけど

 ね。
それで、戦況はどんな感じなのかしら」
 
△△△

「何だ、○○○様もやっぱり気になるんじゃありませ

 んか」
 
○○○

「そりゃそうよ、そんな面白そうな話を聞かされたら

 気になるじゃない。
で、どうなの?」
 
△△△

「はい、博麗神社の者達が過半数を制圧し、勝利目前

 のようです」
 
  博麗神社……
その単語を聞き、眉がビクリと動く。
 
○○○

「博麗神社……
博麗、懐かしい言葉だわ。
博麗霊夢、

 人間のくせに随分とでたらめな奴だったわね」
 
△△△

「その博麗霊夢ともう一人、黒い魔法使いが主だった

 リーダーのようです」
 
  黒い魔法使い……
その単語を聞き、髮がピクリと動く。
 
○○○

「黒い魔法使い……
霧雨魔理沙、だったかしら。
まさ  かあんな人間のインチキ魔法にやられるなんて……

 思い出したら段々腹が立ってきたわ」
 
△△△

「ええ、お耳に入れておこうと思いましたのは、そう

 いう理由からでして」
 
○○○

「……△△△ちゃん、今一番有力なのが、博麗なのよ

 ね?」
 
△△△ 「はい」  
○○○

「で、そのリーダーが、博麗霊夢と霧雨魔理沙なのよ

 ね」
 
△△△ 「その通りです」  
○○○ 「…………」  
  俯いて目を閉じ、しばらくの間考え事をしていたかと思うとおもむろに顔を上げる。
その瞳には一種の確信めいたものが見て取れた。
 
○○○

「……その戦争ごっこに勝ち残るという事は、幻想郷

 が一つに統一されるという事よね」
 
△△△ 「そういう事になりますか」  
○○○

「で、一番優勢なのが博麗なのよね。
……いつぞやの  ここに乗り込んできた連中、霊夢と魔理沙の。
つま

 りそこから導き出される結論は」
 
△△△ 「……次の目標は」  
○○○

「ここだわ~!
 あいつら、今度は徒党を組んで本格  的に攻めてくるつもりなんだわ!
 一体どういうつ

 もりなのよ~!?」
 
△△△

「落ち着いて下さい○○○様!
 まだそうと決まった

 訳ではございませんから」
 
○○○

「ふぅ~……
そ、そうよね、まだ決まった訳じゃ……
 でも油断はできないわね。
あいつらの事だから何考

 えてるか分からないわ」
 
△△△ 「ええ、引き続き観測を続けます」  
○○○

「お願いね。
時と場合によっては……
うふふ、面白く

 なってきそうじゃないの。
目に物見せてやるわ!」
 
  眠れる世界が、ゆっくりと目を覚ましつつあった。  

*E065



○○○ 「さて、幻想郷の方は今どんな感じかしら?」  
△△△

「はい、博麗の勢力が益々力を強め、更に勢いを増し

 ております」
 
○○○

「ふーん……
大勢はほぼ決した、と見て問題は無さそ

 うね。
私達の方はどうなってるの?」
 
△△△

「不測の事態に備えて、主立った者にいつでも動ける  よう準備をしておくように申し付けました。
間もな

 く行動可能になるかと」
 
○○○

「そう、流石は△△△ちゃん、仕事が早くて助かる 

 わ」
 
△△△ 「お褒めに預かり恐縮です」  
  その時、二人の元を訪れる二つの影が現れた。
この場所に入ってきた新たな二人は、恐れ多き者に接するように恭しく傅く。
 
□□□ 「ただいま参上致しました、○○○様」  
×××

「△△△様の命により、既に準備完了しております。

 いつでも御命令を」
 
○○○

「あらあら、皆手が早くて助かるわ。
いい子達ばかり

 ね」
 
△△△

「今の所は幻想郷側も、特に不振な動きは見せており

 ません」
 
○○○

「ではこちらも、焦る事は無さそうね。
二人には待機

 を命じます、但し油断はしないように」
 
××× 「ハッ、了解しました」  
□□□ 「有事の際は、必ず守り通して見せます」  
△△△ 「フフフ、頼もしい事ね」  
○○○ 「……………………」  
△△△ 「おや、どうかされましたか○○○様」  
○○○ 「……一つ聞いてもいいかしら」  
△△△ 「何でしょう?」  
○○○ 「私達、どうして真っ黒なのかしら」  
△△△ 「……えーと、それはですね」  
○○○

「名前だって○○○とか△△△とか、分かりにくいっ

 たらありゃしないわ」
 
□□□

「それはその……
あれです、我々はまだ秘密裏に行動

 している訳ですから」
 
××× 「そ、
そうです、
名前や姿は極力伏せておかないと」
 
△△△ 「……という事でございます」  
○○○

「うーん、何か納得いかないけど……
そういう事にし  ておくわ。
□□□、あなたは一番外に近いところに

 居るのだけど、あちらの様子はどう?」
 
□□□

「はい、人間もそうでない者も、誰一人として訪れる  者は居ません。
時々幽霊や妖精が漂ってくるくらい

 で、至って平穏そのものです」
 
×××

「念の為、周辺も念入りに偵察しましたが、これとい

 って御報告するようなものは何も」
 
△△△

「……おかしいわね、こちらの様子を偵察にくる奴が

 居てもいいのだけど」
 
○○○

「ひっそりと息を潜めて、私達を油断させる作戦ね。

 そうはいかないんだから」
 
△△△ 「……ま、いいか。
とにかく二人とも御苦労様」
 
  □□□と×××は立ち上がって深々と一礼すると、自分の持ち場へと戻っていった。
俄に辺りは静寂を取り戻す。
 
○○○ 「…………
ねえ、△△△ちゃん」
 
△△△ 「はい、何でしょう」  
○○○ 「さっき、何か言いかけなかった?」  
△△△

「……思ったのですが、我々の世界と幻想郷が別たれ

 てから、随分と経ちますよね」
 
○○○ 「ええ、そうね」  
△△△

「という事はですね、もうあちら側は、我々の事なん  て全然全く、覚えてもいないんじゃないでしょう 

 か」
 
○○○ 「ま、まさかそんな事ある訳無いじゃないの」  
△△△ 「だって、誰もここに近寄っても来ませんよ」  
○○○ 「……………………」  
△△△ 「……………………」  
○○○ 「……た、待機で」  
△△△ 「……畏まりました」  
○○○

「くぅ~……
もし△△△ちゃんの言う事が本当だった

 なら、こっちにも考えがあるわよ~!」
 

*E066



○○○ 「……定例会議を行います」  
△△△ 「会議なんてした事無いじゃないですか」  
○○○ 「気分の問題なの。
で、外の様子は」
 
△△△

「はい、博麗……
例の巫女と魔法使いの勢力が、幻想  郷のほぼ全域を制圧しています。
後はもう時間の問

 題かと」
 
○○○ 「大勢に変わり無し、ね。
こちらの準備は?」
 
△△△ 「ほぼ完了しております。
いつでも動けますわ」
 
○○○ 「……で、外の様子は」  
△△△ 「ですから、博麗の」  
○○○ 「そっちじゃなくて、
ほら、
その」
 
△△△

「……全く、何の気配も素振りすらもありません。

 いっきり蚊帳の外ですね」
 
○○○

「……そう。
ハァ、私一人で盛り上がって馬鹿みたい

 じゃないのよ~」
 
△△△ 「何事も無く平和だという事で」  
○○○

「それよねえ、確かに平和だけど……
隔絶されすぎて  誰からの記憶にも残ってないなんて、まるで初めか

 ら無かった事にされてるみたいで」
 
△△△ 「まあお気持ちは分かりますが」  
○○○ 「……ん、ちょっと待ってよ……?」  
  手を口元に持っていき、何事か考える素振りをしばらく見せたかと思うと、突然おもむろに顔を上げた。  
○○○

「……こちらの準備は整ってるのよね。
で、向こうは  私達の事なんて眼中にも無い……
これは私達の威厳

 と尊厳を取り戻す大チャンスかも!」
 
△△△ 「○○○様、それは……」  
  意図を察して口を挟んだが、もうすっかりその気のようだった。  
○○○

「あら、△△△ちゃんは反対なの?
 △△△ちゃんだ  ってあいつらにやられた事、何とも思ってない訳

 じゃ無いんでしょ?」
 
△△△ 「それは……」  
??? 「はーい、賛成賛成~!」  
  突然大きな声が聞こえ、驚いて声の方向を見るとそこには、勢いよく飛び込んでくる三つの小さな姿があった。  
★★★ 「ちょっと、耳元で大きな声出さないでよ!」  
☆☆☆ 「……煩い」  
♪♪♪ 「わ、
悪かったわよ、もう」
 
○○○ 「……益々、誰が誰か分かりにくくなったわね」  
♪♪♪ 「何か仰いました?」  
○○○

「いいえ何でも。
それより三人して、どうしたのかし

 ら」
 
★★★ 「はい、お話の方は全部立ち聞きしておりました!」  
☆☆☆ 「……馬鹿」  
★★★ 「痛たっ!
 何で叩くのよぉ」
 
♪♪♪

「○○○様をコケにしたあの連中は許せません!
 私

 達の力、思い知らせてやりましょう!」
 
★★★ 「そうだそうだ!
 いつでも準備はオッケーです!」
 
☆☆☆ 「……コクコク」  
○○○

「♪♪♪ちゃんに、★★★ちゃんに☆☆☆ちゃん……
 そんなにやる気を出してくれてるなんて、私は嬉し

 いわあ。
よーしいい子いい子」
 
♪♪♪ 「わーい、褒められた~」  
○○○

「これは△△△ちゃんも、その気にならざるを得ない

 わねえ」
 
△△△

「いえ別に、私も反対という訳では無いですよ。
ただ

 もっと適切なタイミングがあると。
ヒソヒソ……」
 
○○○

「ふうん……
なるほど、それは面白いわね。
さっすが

 △△△ちゃん、いい事考えるじゃない!」
 
★★★ 「○○○様、一体何なのですか?」  
○○○

「フフフ、内緒よ。
さ、皆は準備をして待ってて頂 

 戴。
その時が来るのを楽しみにね……
ウフフフ」
 
☆☆☆ 「……怖い」  
△△△ 「さ、あなた達はもう帰りなさい」  
♪♪♪ 「は~い!
 それじゃあ失礼しましたあ」
 
★★★ 「さ、帰ろ!
 ほら☆☆☆、置いてくよ~」
 
☆☆☆ 「…………」  
△△△ 「……元気があって良い事です」  
○○○

「あの子達の為にも、ここは一つビシッと決めないと  ね。
……このまま忘れられてしまう訳にはいかない

 のよ!」
 

*E067






Patchouli Knowledge 「で、私の所に来たという訳ね」  
Marisa Kirisame 「まだ何も言ってないぜ」  
  霊夢と魔理沙は今、パチュリーと一緒に大図書館まで来ている。
紅魔館は最上部を例の集団に占拠されてしまったのだが、パチュリーが管理する大図書館には手が出せなかったらしく、出入りに支障は無かった。
 
Reimu Hakurei 「初めは里の方に行ったんだけどね、そしたら」  
Hieda no Akyu

「うーん……
済みません、幻想郷縁起を引っ繰り返し  て調べてみたんですが、それらしい記述はどこにも

 ありませんでした」
 
Reimu Hakurei

「……という訳でね、あいつらの事を調べるならここ

 だと思って」
 
Patchouli Knowledge

「なるほどね。
まあ、ここはそういう限定的な調べ物  には向いてないと思うけど……
気長に探してみると

 いいわ」
 
Marisa Kirisame 「恩に着るぜ」  
Patchouli Knowledge 「……持ってかないでよ」  
Marisa Kirisame

「わーってるって。
さ、日が暮れる前に済ませちまう

 か」
 
Koakuma 「私も手伝いま~す」  
  その場に居る者総出で、古そうな本・それっぽいタイトルの本等を片っ端から読み漁る。
しかし、まるで当てが無い上に膨大すぎる本の量の為、何の手掛かりも無いまま時間だけが過ぎていった。
 
Marisa Kirisame

「これでもない……
か。
あーもう、見つかる気がしな

 いぜ」
 
Reimu Hakurei

「もう駄目、どこの本を調べたかどうかも分からなく

 なってきたわ」
 
Patchouli Knowledge

「流石に、むやみやたらに探すのは無謀すぎたわね。

 こうなったら、ちょっと方向を変えてみましょう」
 
Reimu Hakurei 「どういう事よ」  
Patchouli Knowledge

「二人とも、あの変な奴が出てきた時に言った事、覚

 えてるかしら」
 
Marisa Kirisame 「えーと、魔界の神がどうとか」  
Patchouli Knowledge

「そっちじゃないわ。
神綺と名乗ったあれは、その後

 こうも言った。
『久し振りね霊夢、魔理沙』って」
 
Reimu Hakurei

「そう、そこよ!
 久し振りって何なのよ、私も魔理

 沙もあんなの記憶に無いわ!」
 
Patchouli Knowledge

「妙な話ね。
霊夢の言う通り初対面だとしたら、どう

 して向こうは顔も名前も知ってたのかしら」
 
Reimu Hakurei 「どうせ事前に調べてたとかじゃないの?」  
Marisa Kirisame 「…………」  
Patchouli Knowledge

「それだと、久し振りって言葉の意味が通らないわ。
 ……?
 魔理沙、さっきから黙っちゃってどうかし

 たの?」
 
Marisa Kirisame

「えっ?
 あー、
うーん……
なんつーかな。
あいつら  の事を考えようとすると、凄くいや~な事を思い出

 しそうになるんだよ」
 
Reimu Hakurei 「思い出すって……
あんた、知ってるの?」
 
Marisa Kirisame

「知ってるというか、なんだ……
私の全身の鳥肌が、

 あの連中の事を覚えてるような」
 
Reimu Hakurei

「意味が分からないわ。
……でも、何かこう、私にも  記憶に薄い膜を張られてるような、そんな感じがす

 るわ」
 
Patchouli Knowledge

「あいつらは、幻想郷中の各箇所に同時展開してきた  わ。
魔界という呼称からも考えて、こことは次元の

 異なる世界なのかもしれないわね」
 
Marisa Kirisame 「だとしたらもう、お手上げだぜ」  
Reimu Hakurei

「何にしろ、私の神社が乗っ取られたのは事実なんだ  から、もう正体なんかどうでもいいわ。
さっさと叩

 き出してやる!」
 
Patchouli Knowledge 「……そうね、レミィも館を取られてカンカンよ」  
Marisa Kirisame

「……だな。
さっさと全部片付けないと、私の望みも  いつ叶えさせられる事か……。
魔界だか神だか知ら

 んが、たっぷりお仕置きしてやるぜ」
 
  敵が誰であれ、打ち倒す以外に選択肢は無い。
その決意も新たに図書館を出ようとした時、ずっと本を探していたらしい小悪魔が飛んできた。
 
Koakuma 「おーい、それっぽい本見つけたよ~!」  
Patchouli Knowledge 「あら、本当に?」  
Marisa Kirisame 「よくやった偉いぞ、さあ貸してくれ」  
  引ったくるように本を手に取ると魔理沙は、小悪魔が指し示したページを開く。
そこには神綺を初め、あの時の連中によく似た顔の絵が描かれていた。
 
Reimu Hakurei

「間違いないわ、お手柄よ!
 それにしてもよく見つ

 けたわね」
 
Koakuma

「そりゃあ無駄にここに住んでる訳じゃないもーん。

 どこにどんな本があるか、大体知ってるわ」
 
Patchouli Knowledge 「……やるわね、司書で雇おうかしら」  
Reimu Hakurei

「パチュリーより役に立つわね。
……ん?
 どうした

 の魔理沙、顔が真っ青よ」
 
Marisa Kirisame 「…………う、うあああああああああ!」  
Reimu Hakurei 「あっ、魔理沙!?」  
  魔理沙は突然本を投げ捨てたかと思うと、頭を抱えて図書館を飛び出していってしまった。  
Marisa Kirisame 「う、
ううううう……
うふふふふ……
うふふふ……」
 
Patchouli Knowledge 「……どうやら触れない方が良さそうね」  
Reimu Hakurei 「……そうね、ほっときましょ」  
  床に捨てられた本を拾って、改めて読み進めてみる。
そこには確かに、神綺を初めとした連中の姿や名前が記されていたが、どれもあくまで魔界という世界の紹介に留まり、詳細を得るまでには至らなかった。
 
Patchouli Knowledge 「……魔理沙は一体何を見たのかしら」  
Reimu Hakurei 「うーん、大した事は書かれてない……
あ」
 
Patchouli Knowledge 「これって……
霊夢と魔理沙……?」
 
Reimu Hakurei

「そう……
みたいね。
こっちには、どっかで見たよう  な気のする奴と……
幽香も居るじゃない。
一体どう

 なってるの?」
 
Patchouli Knowledge

「何にせよ……
向こうが貴方達を知っていた理由には

 なりそうね」
 
Reimu Hakurei

「……ああ気味悪い、もうどうでもいいからさっさと  片付けましょ。
人様の家を不法占拠してくれちゃっ

 て、どうなるか思い知らせてやるわ!」
 
  もう深く考えるのはやめて、神社を乗っ取られたという現実の打破に向けて意気上がる霊夢だった。
……その頃魔理沙はというと、
 
Marisa Kirisame 「うふふ……
白、
黒……
白黒……
うふふふふふ……」
 
  ……と、現実逃避する事で自我を護っていたのだった。  

*E068








  電撃作戦で幻想郷の主要箇所を瞬く間に抑えてしまった、神綺率いる魔界の軍団。
神社には結界を張り、神綺自身は魔界へと戻って戦況を悠々と眺めていた。
 
Shinki

「あっはっは、あいつらのあの顔!
 傑作だったわね

 え、ねえ夢子ちゃん?」
 
  神綺の向いている方向には、前回神綺が登場した時のと同じような歪みが出来ていて、その向こう側に紅魔館を抑えている夢子の姿が映っていた。  
Yumeko

「ねえと仰っても、私は見てませんでしたので何と

 も」
 
Shinki

「そう?
 残念ねえ、夢子ちゃんにも見せたかったわ  あ~……
あの、何も無いと思ったら透明の壁があっ

 て頭をぶつけた時のような顔」
 
Yumeko

「……想像が付かないんですが。
そんな事より、そち

 らの首尾は如何でしたか?」
 
Shinki

「私の方はバッチリよ、あの大人数の前でビシッと宣  戦布告してきたわ。
そのまま神社も抑えたし、霊夢

 へのいい意趣返しになったわね」
 
Yumeko

「彼女らがこのまま黙っているとも思えません。
くれ

 ぐれも用心なさって下さい」
 
Shinki

「その為の結界じゃないの。
夢子ちゃんも破られない

 ようしっかりね」
 
Yumeko 「了解です。
……他の者は大丈夫でしょうか?」
 
Shinki

「んー……
まあ夢子ちゃんは心配要らないんだけどね  え、他の子達は夢子ちゃん程強くないものね。
ちょ

 っと様子を見てみましょうか」
 
  神綺が手を挙げると、夢子の映っている歪みの隣にもう一つ歪みができる。
そこには、別の拠点へと向かった者が映し出されていた。
 
Sara 「わわっ、神綺様!
 お疲れ様です!」
 
Shinki

「サラ、そっちの方はどんな感じかしら。
あなたは門  番がお仕事だから、自分から攻めてくのには慣れて

 ないんじゃないかなーと思って」
 
Sara

「は、御心配頂きまして恐縮です!
 今の所問題はあ

 りません……
ありませんが」
 
Shinki 「ん?
 どうしたの?」
 
Sara

「……ここは一体何なのでしょうか……?
 人影は全  くありませんし、幽霊がそこかしこに漂ってますし

 何と言いますか、空気が気持ち悪いです~!」
 
Shinki

「まあそうでしょうねえ、なんたって『あの世』だか

 ら」
 
Sara

「あ、
あ、
あ、
あの世~!?
 し、
神綺さまあ、
私が  要らない子になってしまわれたのですかー!?
 あ

 の世に逝けだなんて……
うっうっ……」
 
Shinki

「ちょっと勘違いしないの、ちゃんと帰ってこられる

 から……
もう、次行きましょ」
 
  再び神綺が手を挙げると、サラの映っていた歪みにノイズが走り、その次にはまた別の箇所が映し出されていた。  
Shinki 「ルイズ、そっちの様子は如何?」  
Louise 「は、これは神綺様。
わざわざ恐れ入ります」
 
Shinki 「そっちも元気そうで何よりだわ」  
Louise

「は、はあ……
まあ特に問題は無いのですが……
あの

 お、ここは一体何なのでしょうか……?」
 
Shinki 「なあに、ルイズまでどうしたのよ」  
Louise

「ここって確か、無縁塚って場所なんですよね。
何と  言いますか、ものすご~く気味の悪い場所で……

 んな紫の桜、初めて見ました」
 
Shinki

「もう、あなたまでサラと同じような事言うのね。

 っかりね」
 
Louise

「はい、気味は悪いですがお任せ下さい
ってひゃあ!

 今何か聞こえたような……
神綺さまあ~」
 
Shinki

「はいはい次次。
……一番心配だわ、一番小さいし。

 アリスちゃーん」
 
Young Alice 「あ、神綺様!
 こっちは異常ありませーん!」
 
Shinki

「全くもう、アリスちゃんがこんなに元気なのに、あ

 の子達ときたら……」
 
Young Alice 「えっ、何か言いましたか?」  
Shinki

「あー、何でもないわ。
それよりアリスちゃん、一人

 で寂しくない?
 大丈夫?」
 
Young Alice

「はいっ、最初はちょっと暗くて不気味で怖かったん  だけど、今は大丈夫です!
 面白い家を見つけた

 の!」
 
Shinki 「へえ、どんな家なのかしら」  
Young Alice

「いろんな御人形さんが沢山飾ってあるの!
 こんな  にいっぱい見たのは始めてです!
 だから寂しくな

 いです」
 
Shinki

「それは良かったわねえ。
それじゃあもうちょっとだ

 け、頑張ってね」
 
Young Alice 「はーい!」  
Shinki

「うんうん、アリスちゃんは元気ねえ。
それじゃあ最

 後は……
っと、ユキちゃんマイちゃん、元気~?」
 
Yuki 「あっ、神綺様!
 こちら変わりありませーん!」
 
Mai 「…………コク」  
Yuki

「この御屋敷ってば凄いんですよー!
 すっごく広く  て、兎さんが沢山居るんです!
 マイったらさっき

 から兎を追いかけ回してて……」
 
Mai 「…………」  
Yuki 「いたっ!
 もう何よマイ、ほんとの事じゃない~」
 
Shinki

「元気そうで何よりね。
でもあんまり羽目を外しすぎ

 るんじゃないわよ?」
 
Yuki

「はーい、分かってまーす!
 でもここ、全然退屈し  ないわ~!
 ながーい廊下とか、いっぱいある御部

 屋とか……」
 
Mai 「…………バカ」  
Yuki

「あたたっ、
ちょっとマイ、さっきから痛いじゃない

 のよもー!」
 
Shinki

「……ま、元気があるのはいい事ね。
それじゃ夢子ち

 ゃん、頼んだわよ」
 
Yumeko 「……はい、他の者の分まで粉骨砕身頑張ります」  
  まるで自分の双肩に全てが掛かっているかのような顔をして、夢子は自分から会話を切った。
再び一人に戻った神綺は、ゆっくりと立ち上がると景色の遙か遠くに目を向け、小さく呟いた。
 
Shinki

「時の流れに埋もれ、忘れ去られようとしていた我が  世界。
別にそれでもいいと思っていたけど……
折角

 の機会だもの、私達の力を見せてやるわ!」
 

*E069


Shinki 「…………」  
  先程から神綺は数十分、右に行ったり左に行ったりフラフラと歩き回っていた。
特に何かをする訳でもなく、考え事をしている訳でもなく……
ただ単純に、暇だった。
 
Shinki 「ひーまー!
 退屈退屈たーいーくーつーよお!」
 
  とりあえずジタバタしてみたが、当然何も起こらない。
お付きのメイド夢子を始め、主立った者達は皆出払ってしまった為、神社……
魔界の神綺は一人だった。
 
Shinki

「……参ったわね、話し相手すら居ないというのが、  こんなに暇を持て余すとは思わなかったわ。
かとい

 って、あんまり話し掛けるのも邪魔だしねえ」
 
  ただ話をするだけなら、先日のようにまた空間を繋げてしまえばコンタクトは取れるのだが、それであまり邪魔をするのも悪いと思い控えるようにしていた。
妙な所で律儀である。
 
Shinki

「結界なんか張るんじゃなかったかしら……?
 でも  それだと霊夢達の事だから、真っ先にここに来ただ

 ろうしねえ……
あの子達の出番が無くなっちゃう」
 
Shinki

「そもそもあいつら、忘れてるって何なのよ忘れてる  っていうのは!
 せめて覚えていたら……
変わらな

 いか、どっちにしろこうなってたわね」
 
Shinki

「……でも、本当に忘れてるだけなのかしら。
あの反  応は、覚えてないというより寧ろ、初めから知らな

 いっていうような感じだったわね」
 
Shinki

「……寂しいわねえ、外の世界に私達を知る者は最早  無し、か。
あれ以来、ここにやってくる人間も居な

 いし……
きっと、何かが断絶されてしまったのね」
 
  霊夢と魔理沙の中に眠る、旧き記憶。
しかしそれが蘇る事は無い。
魔界を一望できるその場所から世界を見渡しながら、どこか寂しげに呟いた。
 
Shinki

「私の世界、魔界の全てはこの私が創ったもの。
故に  私の力が失われた時、魔界も失われる……
神とはい

 え私も不老不死じゃないものね」
 
  いつの日かは定かではないが、いつの日か滅びが来る事が確定している世界。
彼女達からはそのような悲壮感を感じる事はできないが、唯一全てを見渡せる神綺はその中にあって何を思うのだろうか?
 
Shinki

「だからこそ……
私達の姿と力を、歴史に知らしめて  やらないと。
……という訳だから、誰か早く私のと

 ころまで来て~!」
 
  ……そうなるという事は、送り出した夢子達が全員倒されるという事なのだが、やっぱりあまり深くは考えていないようだった。  

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